ZONE(ゾーン)集中力の世界
2009/12/18改訂
2002/08/28初稿
故、ジャック・マイヨール氏に捧ぐ
久しぶりの収録
先日、あるテレビ番組の依頼を受け、収録に行ってきました。
※この原稿を書いたのは2002年8月末です。私のコーナーには番組からの出演依頼を受け、その収録前に気持ちを整理したり落ち着かせるために書かれたものが多数あります。
久しぶりの収録です。依頼の内容は「スポーツ選手のメンタルトレーニングと強化」です。今回のZONE(ゾーン)についての解説は、その放送をにらんでのことです。
依頼内容は「アームレスリングの選手に自信をつけさせて勝利させる」です。集中力を高めて現地(アメリカ)の大会で勝利させることを目的としました。
以前にお世話になった番組関係者からの紹介でもありますし、企画の意図や内容もしっかりしたものでしたので、今回は協力することになりました。
しばらく、出演は断っていたんですよ。
父の死後、色々とトラブルがあって大変でした。普通ではありえないような面倒を起こす相手がいて、かなりの精神的なダメージがあり一切の活動を停止していました。
肉親が死んだときでも遠慮しない連中はいます。それどころか、「これがチャンスだ!」とばかり、酷い行為やうっとおしい真似に及んだ馬鹿が複数いて、とてもむかつきます。
精神的なテンションが低かったり、あまりにショックな出来事があったり、友人だと思っていた人、親身になって相談にのっていた人の裏切りや嘘などがあれば流石に凹みます。そういった出来事が相次ぐと、どうも誘導そのものが下手になるようです。
大学の関係者から依頼されて講演もやったのですが、これまでで最悪の出来でした。あんなに話すのが下手になったことはいまだかつてなかったと思います。肉親の死と周囲の裏切りとかトラブルが重なれば流石に不可能ですね。
こういった特殊な仕事を行っていると「とても急いでいる」と申し込んでくる依頼者は多数に及ぶんですけどね。そこには番組の関係者やプロダクション、大手のイベント会社を含みます。残念ですが、そういった時に無理してでかけて行ってもいい結果は得られないのです。
私個人(施術者側)が精神的な圧力、内側から溢れるエネルギーに欠けていれば被験者の反応を見逃してしまいます。催眠そのものは霊現象でも超能力でもありませんから勉強すれば誰でもできるようにはなりますが、やはり、難しい依頼内容や緊張感の伴う場所(収録など)では、施術者にもそれなりの心構えと準備がなければ、うまくゆかなくなってしまいます。
おかしな話なのですが、誘導を行う前に、こちら(施術者側)も集中力を高めておく必要があるんですよ。
私の絶好調の時には、被験者が「止まって」見えます(笑)。ZONE(ゾーン)と呼ばれている状態と殆ど同じというかそのものでしょう。瞬時に多くのことがでわかり小さな反応も見逃すことがありません。
それくらい集中力が高まっている場合には、特殊な誘導にも瞬時で成功するようになります。
ZONE(ゾーン)ってなに?
では、そのZONE(ゾーン)っていったい、なんでしょう?
最近になって、最新の生理学や心理学にZONE(ゾーン)という考え方、現象がある、と主張する人たちが出てきています。その解説のために有名なスポーツ選手の実例や素潜りで有名なジャック・マイヨール氏の体験を引きあいに出すケースもままあるようです。
詳しく解説すれば長くなりますから、簡単にだけ説明しておきます。
ZONE(ゾーン)とは、究極の集中力です。
スポーツや競技、格闘技などでもいいでしょう。その対象者が何らかに一心に打ち込んでいるうちに、いわゆる時間の感覚の遮断(もしくは身体感覚の拡大、知覚神経の鋭敏化)が起きます。
難しいので一般向けに簡単な例で説明しますと、事故(特に交通事故)や突発的なトラブル(空から鉄骨が落ちてくる、など)に遭った人が、その瞬間を「スローモーションのように感じた」と表現することがあります。
ほんの数秒の時間がとても長く感じられ、全てが止まっていたかのように錯覚する例が多々あるのです。
このコーナーの読者の方も、ご自分の体験や、周囲の友人、知人を片っ端から当たってみれば、一人くらいはそういった体験をした人がいるかもしれませんね。
これはね、自分が「死」を強烈に意識したり、危険に遭遇したために意識が集中し、そのこと以外の感覚を失い、自己を環境から完全に遮断することで起こります。
昔から死の直前には過去の出来事が「走馬灯(そうまとう)のように見える」といいますが、皆さんはこの表現を聞いて不思議には思いませんか?
現実に死んでしまった人はその瞬間を語ることはできません。一旦、死んでしまえば帰ってくることができないのですから・・・。
死にそうになった、または、死の一歩手前で「帰ってこれた人」の体験談やその時の印象を集めれば「さまざまなこと、周囲の状況が一瞬で見えた」「人生の走馬灯のようだった」と答えることになるでしょう。
人間が一瞬で「スローモーションのような状態に入った」場合には感覚や時間の遮断が起きます。状況によっては音も痛みも身体の感覚さえ遮断してしまったり、まったく感じなくなってしまっているケースがあります。
事故にあって片足を失って目が覚めたり、戦争時に爆撃を受けて大怪我をしていながらまったくそれに気がつかない例もあります。日本において催眠の研究が進んだのは戦時中ですが、そういった記述も複数残されています。一種のトランス状態に近いでしょう。
この「スローモーション」のような状態に入っている時が集中力が高まり、最新の心理学者や生理学者、一部のスポーツトレーナーなどが解説するZONE(ゾーン)という現象に近いと考えられます。
反動と利用方法
通常、ZONE(ゾーン)には簡単には入れません。超感覚とも言いますが、いわゆる人間の持つ一部の感覚を突出させたり、どこかの能力を一気に強化してしまえばその反動が出るからです。
感覚神経の遮断から身体が動かなくなったり、聴覚、視覚に障害が出ます。
死に直面するような大きな事故に遭った人の感想として多いのは、先に紹介したような事例、つまり「まるでスローモーションを見ているようだった」ですが、そのスローモーションの最中に「自由自在に動くことができた」という人はごく少数でしょう。
その殆どは動くことも騒ぐこともできません。大声を上げるとか、瞬き(まばたき)することも忘れてその場に立ち尽くす事になります。
危険でしょ? 身動きがとれません。そのまま何かに直撃されていれば簡単に死に至ります。
それこそ見た光景が最後となり、そのまま走馬灯のようになってしまいかねません。ですから通常、人間はそういった感覚に一気に入ってしまわないよう一種の安全弁やセーフティが厳重にかかっていると思われますし、またそれで十分なのでしょう。
それが時折外れるのは緊急の場合だったり、その「超感覚」つまり、他の神経や感覚を遮断することで自らが生き残るための準備、他の神経や感覚を遮断して「集中する」ことで逃げよう、助かろうという最後の賭けに出るからですよ。
似たような現象の報告は戦場からも数多く報告されます。命の危険にさらされる現場では、やはり超感覚に近い「意識の集約」「感覚の遮断」が起こることがあります。
言葉を返せば緊急時に起こるものであって通常時にはあまり必要がないものでしょう。
超感覚やZONEは確かに存在するですが、それに入ることそのものがある意味で生命の危険に近寄ることでもあるのでしょうね。要するに利益もありますが反動もある。
失うものも多くて「命がけ」になるケースもあるので一種の安全弁が働いており、簡単には外れないようになっているのでしょう。
ところが特殊なトレーニングを積んだり、ある一定の手順を踏む事で意図的にそのリミッターを外すことができる人達がいます。
それがヨガであったり、素潜りをやってる人達(ジャック・マイヨール氏)であったり、タイガー・ウッズのような特殊な才能を持つ人々です。
有名なゴルフプレイヤーやボクサー、F1のレーサーや一部の優秀な役者、ダンサーやタレントさんなどがその世界、つまり「ZONE(ゾーン)」に入れるのは、彼らが特別なトレーニングを積みその精神力と集中力で独自の世界に入り込むことができるから。
身体や神経、意識の一部を遮断し一部を突出させるような独特の技法、能力を獲得しているからになります。
ZONEの再現に必要な条件
催眠を用いても、いわゆるZONEに入っている時と同じ状況を意図的に作り出すことが可能になる場合があります。講演会や練習会では時折、そういった現象を見せることがあります。
集中力が高まった状態で通常ではあり得ないような反応、例えば、遠くの音声を聞き分ける実験を行ったり、隣の部屋で何が行われているか、当てる(読ませる)実験を行ったりもします。
講演の現場で再現したこともありますよ。隣の部屋で小さな囁き声を聞き分けるなどに成功する例もあります。
有名なプロゴルファーなどは、集中力が高まった時、インパクトの瞬間に軌跡が光って見えてボールの転がる方向から止まる位置までが瞬時に映像として浮かぶんだそうです(笑)。凄いですね。
同様の報告はプロ野球選手でもあります。全盛期の王貞治選手(現ダイエー監督)は試合前に打撃練習を行ったらイメージ通り何本でもホームランになるので、今日は必要ないとして打ち切ってしまったそうです。
流石にそこまで凄いのは実現したことがありませんが、催眠を用いて高い集中力を呼び起こし、競技やスポーツ、勉強や実験(収録等も含む)に応用したことはあります。
ただし、実現のためにはいくつかの条件が必要になります。
まず、元々の能力、つまり依頼者本人のキャパシティというかこれまでの努力や下敷き(体力的な余裕、基礎能力の確認)が不可欠となります。
勘違いしてはなりませんが、これまでにまったく経験していないスポーツや格闘技、勉強や英会話、楽器や音楽などをいきなり催眠で上達させたり、行わせることは難しいでしょう。基礎的なトレーニングが終わっていない人に無理を行っても良い結果は得られないと思われます。
特にスポーツの場合、競技それぞれによって使う筋肉は異なります。それを考えないで強引な行為を行えば怪我や断裂の危険もあります。
関節の可動域や動かし方、持久力や体力は異なるのです。私自身も格闘技や球技が好きで長く取り組んできました。(ちなみに兄はバレーボールでオリンピックの強化選手に選ばれています)当たり前ですが、自主トレで腕立て数百回、腹筋数百回くらいはやっていました。運動に対する知識や経験はあります。
例えばですが、短距離走の選手に「マラソンに強くなる」といった即物的でストレートな暗示を行っても難しいでしょうね。本来、用いるべき方向性や個性、下敷きとなる能力の確認を見失った暗示を行っても、思ったような効果は現れないでしょう。
変な部分だけ抜粋したり過信しないで
わざわざ私がこのような解説を行うのは、載せておかないと勘違いした依頼が数多く舞い込むからです。
「私を凄い超能力者(気功師、占い師や霊媒師も同じ)にして欲しい」から始まって、「勉強せずに医学部に入りたい」「運動も練習も嫌いだが、(催眠で)スポーツ選手、スーパースターにして欲しい」などです。
これが結構あったりなんかして・・・。
困るのは年齢の若いご本人ばかりではなく、年端もゆかない自分の子供にそれを当てはめようとか「催眠で簡単に何とかなる」などと、半ば本気で思い込む親御さん、身勝手に思いつく大人がいることですね。
子供さん本人の同意を得てないですし、本人の意向も無視している。催眠で「やってはならないこと」もあるのに専門家である「こちら(私)」の意見とか経験からの忠告は聞こうとしない。
ともかく、「言われた通りにしてくれ」と繰り返します。
では、そういった方々にお聞きします。
あなたのご両親はそういった方法であなたの子供の頃、向き合ったでしょうか?
話し合いはしませんでしたか? 優しく語りかけてもらった経験は? 全部、「ただ黙って親に従えばいい!」と叱りつけて押さえ込むことばかりに終始したのでしょうか? もしそうだったとしたらお気の毒です。
自分の子供を所有物のように勘違いしてしまったり、本人の意向とか学校での環境とか立場も考えず「親だから」と一方的に命令するのは勘違いです。
時代は進化します。社会情勢は刻々と変わります。親が思う価値観やこれまでに得た経験が「全て正解」とは限りませんよ。
私が子供の頃はネット社会が訪れるとは思っていませんでしたし、終身雇用が当たり前の時代でした。今はまったく状況が異なります。
なのに(催眠をなどを用い)子供に強引に何かを押し付け、受け入れろと迫るのでしょうか?
はっきり言っておきますがそのように思い込む方は間違っています。精神の安定しない子供の頃から誰かがそういった行為を行えばその子は幸せになるどころか、将来、個性や方向性を見失って誰かのコントロールを受けかねませんよ。
幼少の頃に強引な「洗脳」行為を受ければ、その影響は成人に至ってからも長く残ることが報告されています。親が意図する事(子供の幸せ)とは異なり、ご本人を悩ませる原因になる可能性だってあるのです。
勘違いしないで欲しいのは、催眠であれば何でもできるのではないのです。この収録に協力してくださった方(番組関係者やスポーツ選手)にもきちんと説明しています。参加された選手は普段から厳しいトレーニングを行い、きちんとした練習を積んでいる方です。
それを一足飛びに飛び越し、一気に何でも可能になる訳ではありません。
催眠という技術の都合の良い部分だけの抜粋とか、期待し過ぎての過信はよろしくありません。
またZONEに入れたり、トランス(催眠)に入ったからといって、全ての悩み事と決別できたり、いきなり素晴らしい才能に目覚めたり、トラブルが何もかもが解決できるのではありません。
※これについては後半で詳しく述べます。
技術背景については詳しくは述べませんが
私は現在、神戸(三ノ宮)在住です。
今回の収録も時間がありませんでしたので、VTRで被験者の表情をチェック、非顕性が高いか低いかを判断してそのまま収録へ参加となりました。
どうも一部の関係者からは、「VTRさえあの人(私)に見せれば、被験者が催眠にかかるかどうかわかる」と勘違いされているらしいです(笑)。
決してそうとは限らないんですが・・・。これはかなり難しいんです。
あちこちの収録に参加し、これまでに短時間で誘導に成功したことがあるせいもあって、どんなにその難しさを強調してもわかってもらえません。「谷口にならできるんじゃないか?」といった、安易な推測、周囲の過大な期待も手伝って、時折、そういった依頼が舞い込むようです。
今回の依頼はその中でもかなり難しいと思います。通常であれば、複数の被験者(出演候補者)を立てて慎重に調べ、非顕性の高さやかかりの深さで選ぶのですが、そのための時間は与えられませんでした。
よほど、断ろうかと思いました。
当然、運(プロデューサーなど番組関係者も含めて)もあると思いますが、よく成功したと思います。
催眠を聞きかじった人にありがちな過ちですが、人間の持つ一部の能力、パワーや集中力を突出させようと考える場合、単純に「あなたは強くなります」と被験者に暗示をかけたり煽った所で効果はありません。
そのような方法では、被験者を強くなったように錯覚させるだけに終わったり、無理をして怪我をさせることとなります。その人の個性やこれまでの努力、安全性に留意し、能力を最大限にまで引きだすための手続きが順番に求められます。
そうそう簡単ではないんですよ。私にしても様々な経験と誘導を通して、選手に教えてもらいながら理解したり、把握した部分が多々あります。
専門的な部分を長々と書けばきりがなくなるので止めますが、特殊な状況とか感覚を呼び起こすのは難しいと思います。そんなに簡単ではないでしょう。
ZONE(ゾーン)とか、スポーツにおける異様な集中力、「意識の集約」にはトレーニングが必要です。催眠を用いれば「誰でもどこでもお気軽に」再現するものではないことをまず理解してください。
素潜りの記憶
意識の集約やZONE(ゾーン)と呼ばれるものの正体を知る為に一例を紹介しましょう。
サーファーとか、海が好きな人ならご存知かもしれませんが、グラン・ブルーという映画をご覧になったことがありますか? 1988年公開の映画で、リュックベッソン(主演はどちらもジャン・レノです)の初編集映画らしいです。
実在の人物をモデルに一部を脚色し、映画化されました。原題はグレート・ブルーでしたがその名前ではヒットせず、改編、改名した後に再公開され、人気となりました。
美しい海の映像。神秘的ともいえる深海へとボンベや潜水具を使わず、素潜りで挑む男達の物語です。この映画の公開当時の1988年頃といえば、私は22歳ですね。公開は1988年ですが、物語はもっと以前の話で1976年代の話を中心にしています。
この1976年というのは、私が10歳の頃で小学校4年生になります。私が催眠に興味を持って、初代の引田天功に心魅かれた頃とも、奇妙に重なり合う時期になりますね。
私のサイトで紹介している書籍「心のプリズム」という本が出たのもこの頃だと思います。
私の子供の頃には、記録映画やドキュメント番組(日本テレビ系列、牛山純一プロデューサー「知られざる世界」)などもあって、潜水具や水中眼鏡なども試行錯誤している最中です。
今のように完成されたスタイルではなかったんですよ。素潜りの場合、水圧に負けないよう眼球に直接装着する、でっかい特殊コンタクトレンズを利用して、潜っていたダイバーがいました。
そういった変な装具を使っていたのは、昔の水中眼鏡では性能が追いつかず水圧の急激な変化に負けてケースが割れてしまうためです。強化プラスチックなどが開発されるのは、もっとずっと後になってからです。
水圧は10メートルで1気圧増します。ですから100メートル(1976年当時の世界記録)だと、かかる圧力は地上の十倍にもなります。
笑い話なのですが、潜水機材をもったカメラマンが途中で置き去りにされることもありました。当時はボンベ式の潜水具(スクーバ、フランスの軍人、J・Eクストーが考案、別名アクアラングともいう)がまだ完全には完成されておらず、「素潜りに潜水機材を背負った人間が負ける」ことが実際に起こっていました。
3分以上も息を止めなんの機材も用いずに人間が一気に100メートルも潜るのです。子供の頃、その不思議な光景に驚愕して熱心に見入った記憶があります。
当時の科学、運動生理学の常識
この映画のモデルとなった人物は実在しており、ジャック・マイヨール氏です。
※残念ですが、「実在した」と言い換えるべきでしょう。2001年12月23日、イタリア・エルバ島カローネの自宅で自殺しているのが見つかっています。親日家としても知られ、度々来日。日本には友人も多数いました。享年74歳。
彼は「イルカから潜る方法、呼吸を学んだ」といっています。講演なども多数行っており、著書に
イルカと、海に還る日(講談社)
海の記憶を求めて(翔泳社)
海の人々からの遺産(翔泳社)
などがあります。
興味深いのは、彼の講演の話、著書の文節にこういった言葉があることですね。
「潜った時、私は自分の身体が水に溶けたように感じた」
「無限に広がる宇宙のように、水中に自分の感覚が広がってゆくことを自覚できた」
先にも触れましたが、素潜りで100メートルを超えるためには、超人的ともいうべき集中力、超感覚を要します。
1970年当時には生理学的に「人間の潜ることのできる限界は40メートル程度」と考えられていていました。その深度では肺は膨らむことができず、人間が潜ることなどできる筈もないと考えられていたからです。
ジャック・マイヨールという異才、天才が現れることで、その限界、常識は覆ってゆくことになります。
彼が次々と叩き出す潜水記録を、当時の科学者はまったく説明できませんでした。いわば現象としての「記録」が先で、科学や生理学は彼の後をついていった、と考えるのが正しいでしょう。
ちなみに深海100メートルに潜ると、肺は地上の十分の一に縮み、呼吸数は一分間に7回程度にまで落ち込むそうです。心拍数を極限まで下げて生理反応を押さえ、無駄なエネルギーのロスを避けて血流は肺や心臓、脳の一部などに集約され重要な部分を守ることのみに使われます。
当時の生理学ではそのようなことはわかりませんでした。人間の心肺の機能や脳や身体への影響もわかってはおらず、水圧に適応するために人間の身体がそういった反応を示すとは思われていなかったのです。圧力であっさり死ぬと思われていました。
そういった事実も彼のような優れたダイバーが現れて何度も潜水を行い、それをデータとして提供、科学者に協力することでやっと事実として認知され、解明されていったことになりますね。
極限の世界において
100M走とか水泳の選手とか、オリンピックレベルの競技者の発言とか指導者やコーチの話はためになりますよ。大脳生理学とか呼吸法、意識の集約が「なぜ起こるか?」「なぜ必要か?」のヒントになります。
極限まで身体能力を使うと、人間は酸欠になります。
動物が活動する時、筋グリコーゲン、肝グリコーゲンと呼ばれる糖質を燃やして燃料にします。たんぱく質や消化器から吸収される栄養分は「瞬間的」には使えません。
脂質として蓄えられた燃料が燃えるのは時間がかかりますから、即物的に燃える燃料として使えるのは基本的には体内に蓄えられた糖質(筋グリコーゲン、肝グリコーゲン)になるのです。
ところが、その糖質を「爆発的」に燃やすと酸素が足りません。
燃料を効率的に燃やす為には酸素が必要ですが、酸素を運ぶのは血中にあるヘモグロビンです。トレーニングを繰り返して備えることで、筋肉や肝臓にあるグリーコーゲン量やヘモグロビンを「事前に」ある程度まで増やすことはできますが、やはり限界がある。
血液ドーピングや薬物使用をしない限り一定量よりも増やすのが難しいのです。徐々に消費したり失われてゆくものですから・・・。特に世界のトップレベルのアスリートになるとどうしても限界がみえてきます。皆が極限までトレーニングを積んでその位置にあるのですから。
で、どうなるかというと意識改革です。
「お前は鳥だ!」「魚だ!」「チーターだ!」と本気で教えるそうです(笑)。笑い話のようですが嘘ではありません。世界各国のトップレベルアスリートに精神論をぶつ指導者が結構いるそうですが、それにもきちんとした理由があります。
人間は緊張すると酸素を消費するんですよ。筋肉に余分な力が入ります。
後ろ足で蹴る動作に前の筋肉群は必要ありません。力むと前と後ろの「両方の筋肉」に力が入ります。精神的な動揺があるとどうしても無駄な筋肉にも力が入ってしまい酸素の消費量が増えます。
ボクシングで世界戦になった途端に、これまで何戦も見事な試合を行ってきたプロが、ヘロヘロになってしまったりするのはそこに「力み」とか緊張が生じるからです。
テレビカメラに囲まれるとか数千人、数万人の観衆がいたり「これで世界チャンピオンになれるんだ!」は、戦い慣れたプロであっても強いプレッシャーを受けます。
オリンピックなどでも同じですね。冬季五輪、フィギュアスケート女子で日本初の金メダリストになった荒川静香さんなどは、普段と同じスタイルや生活習慣を貫こうとしてしましたが、あれがもっとも正しい方法です。
ところが一般的にはそうはいかない。様々なものを背負ってしまいますから・・・。
力むなと言われて力が抜けるなら苦労なんてしない(笑)。寝られなくなったり無意識に「力が入るから」力みであり緊張なんです。そこから力を抜かせるためには無意識の領域に踏み込むことが必要になります。
すると、コーチや監督は精神論?をぶつしかなくなる。最終的には「水と同化しろ!」「お前は魚になれ!」などは結構、効果があるらしい。
現実にはジャック・マイヨール氏の説いた「水や世界と同化する」方法がもっとも酸素の消費量が少なく、合理的で理にかなっている方法ということになります。余分なことを考えれば考えるほど、酸素の消費量が増えて余計な力みが増えて記録を延ばせないことになります。
ご本人の努力の上積みと考えてください
先にも述べましたが、私の元には時折、「特殊な才能、感覚が身に付けたい」といった依頼が寄せられます。
「催眠で悟りが開きたい」とか「超常現象を体験したい」「超能力(霊能力も同じ)を身に付けたい」「子供に催眠で勉強できるようにしたい」などと、さまざまな申し込みがありますけどね(笑)。
超感覚ともいえる一種の集中力、意識の集約は確かにあるのでしょう。ジャック・マイヨール氏が今から30年以上も前から取り組んできた手法はその現れだと思います。
ですが、では「催眠」とか「トランス状態」で全てが解決するか?」といえば「NO」です。その考え方はナンセンスでしょう。
催眠で眠っている潜在能力を引きだしたい、などといってくる人は後を絶ちませんが、その殆どの人は自らで努力することを行わない人です。
自分で熱心に勉強したり努力することを嫌がり、経験を積んで苦労しながら練習することを嫌がります。近道することばかりを望んで安易な方法ばかり探そうとします。そういった人にとって催眠はうってつけの方法にみえるのでしょうね。
残念ですがそれで手に入るものは少ないでしょう。スポーツの能力や技術、知識の勉強であれご本人の自覚と努力、練習は不可欠なんですよ。短絡的に時間や手間を惜しむこと、強引な方法では誰も信用してくれたり、評価してくれることなどないのです。
今回の番組収録への参加はそういった意図とは異なります。
催眠を用い、現在も努力を重ね、研鑽を積んだ選手の方の精神力と集中力を催眠でカバーします。番組の企画、意図も私の望む感覚とはズレておらず助力を行う形となっています。
ご本人の努力の上積みを目指すものです。
いくら「潜在能力」といってもね、当然、そこには個人差もありますしこれまでの積み重ね、その人の個性(パーソナリティ)や特性もあります。私は何の努力も練習、研鑽も行わない人が、催眠で簡単に天才になったり、素晴らしい能力を開花させるとは思っていません。
催眠さえかければ売れっ子の漫才師や素晴らしい歌手になれますか? 世界的な評価を得られるデザイナーになれる? 誰でもオリンピックやワールドカップに出場する選手になれる?
流石にそれは不可能だと思います。
もしそんなことがまかり通ってしまえば異常ですよ(笑)。
一時期、アメリカなどでもそういった過ち、催眠に対する過大な期待や錯覚がありましたが、今ではそういった感覚は収まってきています。
もちろん催眠やヨガ、心理学の知識やテクニックを取り入れながら世界各国で、メンタルトレーニングに取り組む選手は大勢います。
それで全てが変わるのではない
私は著書やテキストに何度も書いていますが、他者催眠は自己催眠の延長線上にあるのです。今回、ここで紹介するZONE(ゾーン)などはその典型でしょう。
もし前記したような煽り文句「催眠にさえかかれば全てが解決する」「ZONEやトランスに入れさえすれば幸せになれる」のが事実だとしたら、私の周囲は天才だらけになりますよ(笑)。相当数の誘導をやっていますから。数千人を優に超えるでしょう。
トランスやZONEに入ることだけで全てが変わってバラ色になり、素晴らしい人生が待ち受けているとするのなら、私の周囲には人が溢れ、悩む人や苦しむ人は一人もいなくなって次々に新しい才能を開花させていることになります。
残念ですが、そうではないのです。
(催眠そのものが)深くかからない人もいますし、たとえ深層催眠にかかったとしても思ったような効果が現れない場合もあります。常に結果が一定で、依頼者側が望む効果があっという間に現れるか? といえば、そうとばかりは言えないのです。
ZONEやトランス(催眠)で全てが片づくのなら、私自身がウンウンいいながら新しい何かを勉強したり、苦労して努力する必要もなくなるでしょうね。
難しい収録も試験も楽チンですし、新しいソフトとかプログラムを使いこなすことも軽々とできるのでしょう。どんな資格も簡単にとれることになります。
私はこのホームページを開設した当初から、一度もそのようなことを宣伝したり、煽ったことはありません。
私自身も意識の集約は起こせますし、ZONE(ゾーン)には入れますよ。私自身が時には断食などの手法を用いて、それを発現させ応用しています。
では、ZONE(ゾーン)にさえ入れれば、すべてはバラ色で幸せになるのでしょうか?
私はそれは勘違いだと思っています。
いわゆるカルト宗教や一部の営利集団(自己改革とか地球愛を説く連中)に取り込まれたり、逃げ込んでしまうのはそこに救いがあるように見えるからです。
彼らの煽り文句を「本当だったら素晴らしい」と勝手に思い込んでしまうから・・・。現実から目をそらし、努力することを辞めて「そこに参加したり行きさえすれば助かる」ように勝手に思い込んでしまう例も少なくありません。
「悟りを開きさえすれば、悩み事はなくなる」などと考える人もいるようですが、それもあり得ないでしょう。
坊主やカウンセラー、医者や催眠術師(笑)に悩み事や煩悩はありませんか? 悟りとは家族や友人、知人をないがしろにしたり捨てたり、社会生活を無視して何かに逃げ込むことで得られるようなものではないからです。
催眠もZONE(ゾーン)も、座禅や宗教によって得られる悟りや心の平安も、その人の全てではなく一部です。全てではない。また、その一部に過ぎないものを過信して「これで全てが変わる」「今後の人生をバラ色に変えることができる」などと思い込むのはとても危険でしょう。
スポーツや仕事において催眠を用いるのは自己トレーニングの延長線上に考えるべきでしょう。
自分で集中力を高めるのに時間がかかったり、試合前にどうしても緊張してしまったり、あがり症で実力が発揮できないなどを解消するためには高い効果があります。練習の時と同じように力を引き出すことは可能です。
競技や試験において「実力はあるが、精神的に動揺してしまって発揮できないケース」があるのです。ですからトレーニングを用いて調整しておく。そのお手伝いは出来ます。
きっかけさえつかめれば、後は自分で維持管理することも可能になると思います。
苦しみや悩みのない人はいない
私もジャック・マイヨール氏の著書を読んだ事があります。グラン・ブルーも何度かみたことがありますし、子供の頃に流されたジャック・マイヨール氏のドキュメンタリーは凄まじいインパクトがあった。
なのにそのジャック・マイヨール氏本人が、自殺という形で人生を閉じています。
その一点だけみても生きてゆく事や悟りを開く事、様々な現実と向かい合うことがいかに困難かを思い知らされます。
彼は世界的な知名度もあって社会的に尊敬されていました。著書もあれば講演会もやっており、日本も含め世界各国に複数の友人や知人もある。
それでも自ら、死を選ぶことはあるのです。
私にしても死にたい時はあります。悩む時も苦しいときもある。社会には悪意も多く嫌な思いもありますから・・・。時節とか社会情勢、不幸なタイミングもあります。
肉親や家族の死、体調不良や事故、仕事の失敗や資金繰りが思うに任せない場合もあります。
生活においても何もかもがうまくいくとは限りませんよ。いわれのない中傷、勝手な思惑をぶつけられたり、誰かに勝手に利用されたりもします。
私のように催眠などに長く取り組んで一部には専門家だ、第一人者だなどと持ち上げられてもそんなものなのです。
前記したジャック・マイヨールさんも、お亡くなりになる前に「寂しい」「孤独だ」と語られていた、と外電には書かれていました。
その報道が真実かどうかはわかりません。マスコミ報道は事実とは異なり、ゆがんだ形で報道されることもよくあります。なので真実は亡くなったご本人か、よほど親しい友人や親族にしかわからないと思います。
親しかった人達とか近親にいた周囲はただ、故人の気持ちを推し量り推測するしか方法がありません。ただ、ご本人が自殺という形で亡くなられた今から思えば、ジャック・マイヨール氏が何かに悩み、真剣に考えていたことだけは事実なのでしょうね。
私も彼の考え方や生き方、映画や著書に影響を受けたことがありますから、彼の自殺という現実とその外電(孤独だという言葉)に強いショックを受けた一人です。
ジャック・マイヨールさんの講演も本も素晴らしいものでした。地球規模の汚染や海洋問題にも触れていますし、社会や子供たちにもメッセージを送っています。その言葉と姿勢、取り組みに感銘を受けた方も大勢いますし、亡くなった今でも惜しむ声は絶えません。
それでも、人は自ら命を絶つことはあるのです。
報道番組である女子アナが・・・
彼の自殺の直後、あるテレビ局の女性のアナウンサーがジャック・マイヨール氏を名指しして「あの人は気難しい人だったので」などと言っているのをみて、私は笑ってしまいました。
この女に「亡くなった人の、いったい何がわかるというのか?」と思ったからです。
そのアナウンサーが言うように、自殺した「彼」は弱い人で、気難しくて孤独な人だったんでしょうか?
亡くなった人には、亡くなった人なりの事情と考え方、決意があるでしょう。
死を選ぶ、というのはそういうことです。
自殺が簡単な訳はありませんよ。死は苦しいもので汚いものです。痛みや辛さ強烈な怖さもある。それでもその「死」を選ばざるを得ないくらいの「悩みや苦しみ」がある人が自ら死を選ぶのです。
それを悼む(いたむ)のでもなく偲ぶ(しのぶ)のでもなく、ただ単に「彼に何度か取材で会ったことがあるから」だけでわかったつもりになり、そういったコメントを垂れ流す女性アナウンサーの姿勢に嘲り(あざけり)と哀れさすら感じます。
最近のアナウンサーとかニュース番組は程度が低くなりましたね。特に女子アナは酷い。自分が芸能人やタレントであるかのように錯覚している例がかなりあります。
普通は人が亡くなった場合、公的な場所では「お悔やみ申し上げます」とだけ言うものです。報道に携わっていたり、ニュースを「読む」側ならそれが当たり前です。そのニュースに衝撃を受けている家族や友人、仲間だっているのですから。
私的なコメントや感想、まして故人の中傷に近い発言など誰も求めていないでしょう。それが「事実かどうか?」が争点ではなく、死者は言い訳や抗議が出来ませんから。
遺族や友人、ファンのためにそういった言動は「慎む」のです。そういう発言そのものが、「人として恥ずかしい」行為だから。そういう発言はその人が「生きている時」にのみ許されることです。
最近の女子アナは、その程度の配慮や知恵もないんですかね?
彼自身が講演や著書で著していた通り、海やイルカとの触れ合いを通して悟りに近い境地を体験していたり、ZONE(水と一体化したような感覚になって、普通では潜りえない深度に到達した)記述、何度も達した経験はとても興味深いものでした。
一部の人達からすればそれは素晴らしい経験で自分も手にしたいと望みます。彼に憧れる人からすれば「それさえ得られれば、自分の人生はバラ色に変わる」と思い込んでいたりもします。
どんなに素晴らしい才能を開花し、周囲に羨まれるような状況にある人でもきっと悩みや苦しみや悲しみ、痛みや怒りはあるのでしょう。悟りを開いたとかトランスに陥った、「何か?」に触れた瞬間に全てがなくなる訳ではありません。
その痛みや苦しみ、その人の人生の重みはその人だけにしか理解できないのです。
私は彼がただの頑固者、気難しいだけの老人であったのならここまで多くの人の支援、協力を得たり、多くの人達の気持ちに影響を与えることなどなかったと思っています。
哀悼の意を表します
彼の著書を読み、影響を受けた人達によって映画が作られています。
わざわざ彼の講演を聞きに来る人がたくさんいたのは、彼の「言葉」体験、技術、歩いてきた道筋や過程、叫びにも似た「魂」に共感できる「何か?」を見つけたからではないでしょうか?
ZONEに入ることができたから素晴らしいのではなく、自分の得た体験を一人でも多くの人々に話そう、技術や知識を後世の遺そうとした彼の姿勢が素晴らしいのだと思います。
多くを支え、信念を持って「何か?」に熱心に取り組んでいても、寂しい時、悲しい時、辛い時はあるのでしょう。あなたはそれを笑いますか?
私は不思議に思います。
世の中に強い人なんて一人もいませんよ。なぜそんな単純なことを忘れてしまう人が多いのでしょう? 人間はどこかに弱さと脆さ(もろさ)を抱え、それでも生活を守り、生きていかなければならないのです。
死んだ今になって彼を「自殺した」ということだけで勝手に悪く評価している人や、たった数回の面談でわかったようなつもりになって発言している女子アナウンサーなどは、なぜ「相手を簡単に計れる」「自分はあの人を理解している」「知っている」と単純に思い込めるのでしょう?
あなたがもし亡くなったとしたらそんな言葉で表現して欲しいですか?
私も、ジャック・マイヨール氏が亡くなったことにショックを受けた一人です。死の真相は知りません。悩み、苦しみ、何かを決意し何かを選んだ故人にしかわからぬことはあります。
ただ、できることならもう少し、何かを綴り語っていて欲しかったですね。
孤独はとても辛いでしょうが、孤独でなければわからない、孤高(ここう)でなければ綴れない言葉もあるのですから・・・。
故人の失われた才能、これからはご本人から語られることのなくなった言葉に、哀悼の意を表します。
一方的に悪く捉える人はちょっと、ねぇ・・・
大勢に影響を与え、素晴らしい考え教えを行い、普通の人のはない経験をもち、たくさんの友人がいる人でも、孤独に悩んだり、苦しんだり、悲しみはあります。
それは仕方がないことでしょうね。人間なんですから。人は神にはなれませんし、神のように超然としている必要もないでしょう。弱さ、悲しみ、苦しみ、煩悩を持つからこそ「人として」何かを探し、努力し、育もうともするのです。
耐えきれず自ら死を選ぶ人もいます。それを逃げたなどと中傷する例もあるでしょうが、死ぬのは苦しいですし怖いですよ(笑)。確かに逃げには違いないでしょうが、そんなに簡単な逃げかたでもありません。
末期癌の患者さんがモルヒネや麻酔が効かなくて転げ回ることもある。痛みや苦しみから「殺してくれ!」と叫ぶような例もある。耐えきれずに自殺を選ぶケースだってあるんですよ。
外電ではジャック・マイヨール氏も「持病に苦しんでいた」との報道はあります。
安易に「自殺した」という一点だけとって相手を誹謗中傷できる人は、本当の意味での痛みとか苦しみを背負ったことのない人か、元々、人としての優しさを持ってない人でしょう。
究極というか最終手段として自殺があるのです。家族に末期癌の患者とか、介護で苦しむ人を持ったことがあったり、病気の痛みに苦しむ人を一人でも見ていたら絶対にそんなこと言えませんよ。
前出の女子アナなんて嫁にもらったら大変でしょうね(笑)。
夫が悩んだ末に自殺したら、同じような言葉を平気で投げつけるでしょう。「あの人は身勝手な人だったから」とか・・・。
この人は同じ言葉を家族、例えば自分の息子や恋人を亡くした時に誰かから投げつけられたらどう思うんでしょうね?
マスコミ側の人間に簡単に心を許したり、フランクになるほうがおかしいですよ。
たった数回取材しただけで、その人の死後に「あの人は気難しい人だったから」と番組で発言してる姿をみればわかることです。
別に友達でも家族でもない。なのに亡くなれば「気軽に取材に応じてくれなかったから」というだけで悪口すらいいますよ。故人を失って悲しんでいる家族や仲間の感情も考えずに・・・。そんな連中と友達になりたいですか?
この女性アナウンサーの態度が、全てを現しています。
亡くなった方はいずれ忘れられてゆきますが、自殺という一点だけを捉えて彼の功績を否定したり、著書や発言の中身を歪める人がいるのは悲しい限りですね。
その人の知識、技術、経験はこれからも残る
彼の凄かった所は、彼の後も弟子達が記録を打ち立て手法が常識として確立されたことです。彼の編み出した手法、ヨガなどの呼吸法を用いて集中力を高めて数十メートル深く「潜る」という行為は、当時の科学者すら予期できなかったことです。
今となっては人間が素潜りで100M以上潜れること(重りを持っての下降です。フィンや重り無しですと88M前後)が常識となりましたが当時は徹底して否定されていたのです。
でき上がった手法のアレンジとか、達成後からもっともらしい解説を付け加えることは誰でもできる。それを「最初に出来る」人はとてつもない勇気と努力が必要です。
彼が不正出の天才であったことは誰にも否めませんよ。
講演、著書、ホームページやインタビューなど、どのような形式をとるにしろ、その人の綴る思い、経験や考え、語る言葉に影響を受ける人が何人もいるのは、そこにその人の魂、心の中の叫びがあるからです。
場合によっては歌や詩、音楽もそうでしょう。絵画や映像の場合もある。そこに込められる「何か?」が、見る者や聞く者、受け取る側の「何か?」を刺激し、魂を揺さぶる時、そこには感動や驚き、新鮮な衝動があるのだと私は思います。
故人は帰りませんが、その人の遺した技術、知識、経験は後世に引き継がれます。
ジャック・マイヨール氏の残した技術、知識、そして彼の言葉や表現、記録を通して伝わった「魂」が誰かに引き継がれ、きっとまた新しい「何か?」を育むのでしょう。
今は亡きジャック・マイヨール氏に哀悼(あいとう)の意を込めて、この文章を綴りました。
2002年08月28日 初稿
2009年12月18日 加筆、修正
谷口信行
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