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通りがかりの人に催眠はかかるのか?
2009/12/15改訂
1998/11/23初稿
個人ではどうやっても実現できない実験、検証
企画が持ち込まれた経緯
この企画は1998年の11月23日にテレビ番組の企画(TBS系列、ワンダフル)で行った物です。
この記述は撮影日記としてトップページに置いていました。リニューアル(2009年12月)に合わせて加筆修正してあります。
いくら仕事で催眠やカウンセリングをやっているとはいえ、いきなり通りがかりの人に一方的に勝手に催眠をかける訳にもいきません(笑)。普段はやってませんから誤解しないで下さいね。
この実験は番組やテレビ局の依頼、周囲の協力があってこそ、なし得た実験です。
そういった内容については、以前から興味はあったんですけどね。はっきり言えば私は誘導に成功する自信もありました。
なぜなら当時の私はすでにあちこちに出かけては難しい誘導に成功していたからです。武者修行のように全国各地に出かけていました(笑)。向こうっ気が強く、自分の技術に自惚れがあった私はどんな場所に出かけるのも厭わず、難しい施術とか誘導の依頼があるとむしろファイトが沸いたものです。
繁華街のイベントとか音楽やカラオケがガンガン鳴っているお店で何度も成功しました。
とはいえ、公共の放送局でカメラがまわっている状態、まったく事前の準備がない状況で通り掛かりに催眠誘導を行った経験はない。自分の技術に多少の自信があるにしても成功するとは限らない。収録は一発勝負ですからね。どんなに「過去には成功した!」と言い張ってもその場で失敗すれば評価されないのです。
幸いにも「催眠の番組を撮りたい」という連絡をある局から貰いました。私以外にも何人か先生を呼んだらしいのですが、希望に合う先生がいなかったのか内容が難しいのできっぱり断られたらしい(笑)。
※この辺りについては著作で詳しく書いています。1999年6月に大阪の出版社から刊行していましたが、経営者が変わっています。
前の経営者が「一円も」私に印税や原稿料を支払ってくれなかったので現在は廃刊にしています(笑)。欲しい方はテキストのコーナーから申し込んでください。
著書でも書きましたが連絡を貰ったのは電子メールです。当時、催眠のホームページは珍しかったんですよ。絶対数が不足している上に文章で解説をやってるページは殆ど無かった。
で、私のホームページに書かれている1コーナーの内容に目を付け「この先生だったら呼んでみても面白いんじゃないか?」と思ったAD(企画当初、今は偉くなってるでしょう)がいた訳です。
業界の裏側とか事情は知っていたんですが
連絡を受けた時、多少迷ったんですけどね。私は以前の仕事でマスコミ関係者と何度も打ち合わせやっています。週刊誌や地方局、芸能事務所にも知り合いが多かったせいで色々と裏側を知っています。
ですから、あまりテレビ局などに良い感情を持っていませんでした。
また、催眠などは内容が特殊ですからね、やはりどうしても現象の一部分だけを捉えて興味本意な内容になりがちなのです。依頼や相談の看板を掲げる手前、テレビ番組から依頼を受けたからといってすぐに嬉しそうに飛びつく訳にもいかないですしね。
ただ、その番組はお色気禁止でした(笑)。ヌードどころか水着も殆どなかった。当時としてはかなり珍しかったんですよ。エッチな内容ばかりやってる深夜番組とは一線を画します。
迷いはしましたが、取りあえず電話して話を伺ってみることにしました。
当時(1997年から1998年にかけて)はネットの黎明期です。パソコン通信などからなるいわゆる掲示板のシステムからやっと個人がホームページを持てる時代に入ったばかり。
常時接続などは夢の世界です。皆が電話回線でやってました。アナログモデムを繋いでアクセスポイントに電話をかけてやっと更新や受信が出来た時代です。インターネットで「ネットサーフィン」などという言葉が出来たのもこの頃ですが、ネットを時間を気にせず使うことが出来たのはテレビ局くらいでしょうね。
ともかく電話料金が高かった。ネットカフェも存在しません。ウチはMacでホームページを作って更新していましたが、Windowsのシェアが低かった時代です。パソコンはどれもとても高くて買うのに苦労しました。
敷居は高く、解説書も少なかった。費用もかなりかかります。ですが私の行ってる仕事、つまり「催眠」という特殊な事情がホームページの開設に踏み切らせました。
偏見や錯覚も多く、地域情報誌とか雑誌、新聞などには一切広告が載せられませんでしたので。
結局は「腕試し」に行った(笑)
ホームページの絶対数、催眠に関する情報をきちんと載せているサイトがかなり少なかったのでテレビ番組が目を付けたんでしょうね。
電話してみると交通費も出演料は「出ない」と言われた(笑)。
悪い予感がぴったり的中。要するに東京キー局の周辺で催眠をかけてくれる適当な先生がいないので、安く使えそうな人を郊外(当時の私の住まいは大阪)から呼び寄せようになったのでしょう。
仕事を休んで伺うのに交通費も「自分で負担しろ」と言われ、舐められたもんだと思いました。
それでも交渉しました。私は元々セールスや営業を主体でやってきた人間ですから・・・。交渉事は慣れたモンです。仕事において怒ったり切れたりすればお終い。
営業の世界ならそこそこ名前も売ったし実績もあったのですが、この世界(催眠やカウンセリング、インターネット)では新参者でしたからね。名前を売る必要も誰かに知ってもらう必要もあった。
それ以上に興味があったのは、「自分の技術が放送に堪えれるレベルかどうか?」つまり腕試しです。自分の磨いた技術が通用するのかどうか試して見たかった。後でADの方に聞いたんですが、テスト(腕試し)がある、というと大方の先生が「失礼な!」と怒るか「そんな必要はない!」と言ったそうです。
私だけが「いいですよ。どこに行ってもそんなモンです。まず私の腕を試してみて、納得がいったら依頼して下さい。駄目なら駄目でいいですよ」と平気だったので、やたら印象に残ったそうです(笑)。
「交通費だけは出して下さい。仕事休んでゆくのですから」ともいったんですけどね。
かかる人は見ればわかる?!
ある意味、これは嘘ではありません。
その後もあちこちの番組に出ました。取材も講演(公演も含む)も受けた。あちこちの場所にいってプレッシャー受けながら実演をやるとかかりやすい人を見分ける方法も出て来ます。
私の経験上で言えばかかる人はみればわかります。面白いのはね、飲みに行ったり遊びに行って催眠を行う場合にも、私は催眠にかかりにくそうな人は無意識に避けてしまうのです。
かかり易い人ばかり上手に選びます(笑)。自分の気分がノッてる時は、そういった勘がまったく外れません。よく人(特に催眠を聞き齧ったりやってた人、他の先生と収録したスタッフ)に驚かれるのですが、私からすればそんなに違和感はなかったのですよ。
勘といえば勘の部分があるのは否めませんが、これまでの経験とか、誘導の回数による裏打ちがありますからそんなに外れない物なんですよ。
これまでに誘導に成功した例、失敗した例、当時の体調や自分の感覚などで気になったものは全てパターンとして書き起こして分類し、データーとして残してあります。
二、三日寝てない状況など流石に体調が悪く集中力が続かなくなります。ホームページの更新作業やメールへの受け答えなどで時間がないこともあるのです。風邪をひいて高熱があったり、体調不良で入院する直前などはやっぱり読み違える場合もあります。
また無理な内容を急にやれといわれて気分がノッていない時とか、異様に緊張している時はうまくいきません。
職人には独特の感性、感覚や経験がある
経験と共に多少、自身の体調が悪くとも誤魔化す方法やそれでも失敗しない方法も見つけましたけどね(笑)。
やっぱり一種の職人芸の部分がありますから。職人は職人らしく経験や知識、技術に則って製品を仕上げ納めようとします。ところがその職人の意見とか経験をまってく受け入れてくれない方々もいる。
そういった場合は無理です。催眠においても「絶対に除けない」手順はあります。クライアント(依頼者やスポンサー)だからと無理難題ばかりが並べばうまくはいきません。やはり現場が誤解していると実演は難しくなります。
ただし、ある程度の部分まで私に任せてもらえるならかなりの確率でわかります。
「通りがかりの人でも(かかるかどうかは)見ればわかるんです」
お会いした当日、ディレクターやプロデューサーは私がそういった瞬間に「ホーウ!」といったきり、絶句していました(笑)。
そんなことを言ったのは私一人だったからでしょう。
後でわかったのですが、その番組は今までに何度も催眠の放送をやってるんですよ。過去に何人も催眠をやってる人の面接を行ったのに、その全ての人が「現場でいきなり催眠をかけるなど絶対に不可能です」といって帰ったんですよ。
そこには著名な催眠術師?とか、当時、他の番組で有名だった方も含まれます。
なのに私だけが更に踏み込んで「かかる人は見りゃわかるんだ!」といい切るんですから、おかしな話でしょう?
私にしても賭けは賭けです。やれば成功する自信はありましたが、今までにそのようなこと(通り掛かりの人にいきなるかける)をやった経験はありませんでした。
あれば犯罪ですよ(笑)。あれは番組収録だから可能になったのです。
面白いからやってみたかった
そこまで言わなきゃ誰も使わないんですよ。
ま、賭けですね。
私は当時テレビ業界においては無名の新人だったのですから。失敗を恐れるなら、すでにどこかで実績にある先生を用いるでしょう。
今になって色々振り返ってみると異様でした。当時はどこに行って誘導やっても殆どに成功していました。神戸(三ノ宮)のにぎやかなbarとか大阪の北新地の高級クラブとかショーパブとか、騒がしい場所うるさい場所、私がテキストに「催眠誘導は静かな場所、環境を整備しましょう!」と書いた正反対の場所で、わざわざ誘導を行い次々に成功していたのですから・・・。
明石で飲んでいる時に女性に「催眠をかけてくれ」と頼まれました。隣にいたヤクザにインチキだと脅かされて、その人にかけたこともあーる。
一緒に飲みに行ってた知人の医者が先にヤクザに因縁つけられてしまったので、助けるために実演せざるを得なかった(笑)。それでも一歩もひかないどころか、私には誘導に絶対に成功するとの自信があった。
異常に感じるかもしれないですが、当時の私としては普通の感覚でした。
現場で何人に催眠がかかり、何人に深層誘導に成功するかは実際にやってみない。そう思っている先生も多いでしょうし、事前誘導や予備催眠なしに成功するのは至難の技です。
かかりが浅くて被験者(この場合は出演者)のリアクションが弱い場合、向こう(番組側)からすれば、催眠にかかったことにはなりません。
「瞬間催眠はある!」「私には短時間で誘導ができる!」などとと言い張る自称、日本一の催眠術の大家、大先生はいっぱいいらっしゃるようですが、表に出て路上で誰かを捕まえ、カメラをまわしている状況で私と同じことを行った人はいません。
生放送だと尚更、難しいでしょうね。
通常そこまでの深さ、つまり、被験者にはっきりとした反応や行動を示すような催眠の場合にはかなりの時間を要します。モノの本とか指導書にもそう書かれていますよ。私自身、テキストやビデオではそう解説することもある。乗り越える方法は様々にありますが初心者向きでないことは確かですね。
番組は視聴率のアップにためにインパクトのある映像を欲しがっていました。今までとは異なる情報や技術を求めているのですから、やはりハッキリとした反応が求められます。
同じなら呼ばれませんよ(笑)
これは著書でも書きましたが、打ち合わせ(という名の面接)に行って見れば他にもね、すでに何人か催眠「術」の先生が呼ばれていました。
何人も面接は行っていたようです。私は全国区ではまったくの無名でした。その有名な人達と比べれば、当然、知名度や信頼では遥かに落ちるでしょう。ですから、私はこれまで誰も成功していない内容にあえて挑戦したんですよ。
知名度をあげたいとか番組に出たいとか以前に、ともかく自分の技術に自惚れがあったんです(笑)。催眠に関する自惚れが。
「俺なら絶対に成功する!」という信念とうか、おかしな自信が満ち溢れていて疑ったことがなかった。誰が出て来て何を言っても「この程度の事なら俺は成功できる」との自負があった訳ですね。
幾ら「私は凄腕です!」などと自分で煽った所で、実証しなければ誰も信じません。自信があるならば他の人達が一度もやってない事に挑戦し、実際に大勢の目の前で成功しなければ意味などなくなってしまいます。
誤解している人がいますが、普通に事前催眠をやって普通に催眠誘導を行うならそんな人幾らでもいますよ(笑)。誰かがすでにやった事をなぞったり、物まねするのは誰にだってできます。
事前催眠(予備催眠)の概念を最初に番組に持ち込み周囲に理解させた先生は偉いし凄いですが、それを知って、同じ方法を用いれば「私もテレビに出られる」程度に捉える人は、安易であると同時に非常に愚かだと私は思います。
だったらその先生にずっと依頼すればいいのです。他の人に出番はなくなります。
実績のない会社とか個人に依頼する理由は?
その先生が「出ない」とか引受けなくなったのなら、それはそれでまた理由があると思います。
番組側の要求がエスカレートして応えきれなくなったか、面白い内容をと求められてアイディアが尽きたのか、ともかく、引受けなくなったのかを見極める必要があります。
どんな会社も実績のない相手はできるだけ避けようとします。それは無用なリスクを背負うことだからです。過去にわかりやすい成功例があれば相手としては依頼しやすい。
なのに新人とか、過去に取引のない相手を選ぶとすればそこには何らかの必然、理由が存在しないといけません。
結局、コロンブスの卵と同じ(笑)。何かを知った後、誰かのやった方法を見た後で「あれくらい俺にだってできる!」とやっても意味がない。そんな人、誰も凄いとは思わないでしょう。
当然「過去に行われた方法」「同じ内容」でいいのなら、失敗の少ない過去に実績のある先生に依頼します。
他の先生にはない、何か特殊な才能や特異な部分を持っていないと、わざわざ新しい人間に依頼する必要などどこにもないんですよ。
よほど特殊なキャラクターであるとか弁が立つとかがないと、その程度の人ではすぐに飽きられます。
半信半疑でスタート
皆、半信半疑だったんでしょうね。担当ディレクターなどは「谷口さんが失敗したら失敗したで、そのまま放送しちゃっていいですか?」と聞いてきました。
望む所でした(笑)。当時は鼻っ柱強いし失うものなんてありません。
この仕事を始めた直後でした。確か彼女とももめて別れた後です。私の技術とか自信を誰も信用してはくれず、パソコンの使い方を解説書を読みながらやっと覚えた程度の頃です。
当時は自身で運営しているホームページですら薄っぺらい内容で、頼るものとか、縋るものもまったくなかったんですよ。
あったのは根拠のない自惚れと自信だけです。
技術を高め、練習だけは人の何倍もしたとの自負があった。苦しい思いも哀しい思いもしましたが、それでも自分が習い覚え、今後を賭けてみようと思った技術に偽りや誤りなど無いとの強烈な思いだけが私を支えていました。
他の先生は実演のテストやプレッシャーに負けて逃げ出してしましたが、当時の私がその程度で引き下がる訳がないでしょう。
担当ディレクターとか番組側は失敗したら、おちゃらけの企画に摺り替えるつもりだったんでしょう(笑)。ルパン三世みたいな「真っ赤なシャツを着て来てくれ」などと言われて、現場でもめたくらいですから・・・。流石にそれは勘弁してもらいました。
まあ、最初は仕方ないでしょう。お互いがお互いをまったく知らない状態なんですから。手探りでどこか接点とか折り合いをつけるしかありません。
私も疑心暗鬼で彼らを信用していません。彼らは彼らで私を信用はしていなかったでしょう。なんせ、お互いがまだ知り合ったばかりで一度も収録を行っていませんから・・・。海のものか山のモノかもわからないのです。
取りあえずその場は「大丈夫です。私にはできます」と言い切って帰りました。
事前催眠は必要なのか?
この記述も懐かしいですね(笑)。今の若い世代には事前催眠(先生によっては予備催眠とも言います)という言葉すら忘れ去られつつあるでしょう。特にテレビ局の現場などでは知らない人も増えたと思います。
現場でディレクターになっている世代は、すでに私よりもかなりの歳下でしょう。ですから知らなくても無理はない。
今から十数年も前にはそういった「催眠術を使った番組」も結構あったんです。
話を戻しますが、事前催眠が「絶対に必要か?」と言うとそうともいえません。
ショー催眠を行おう、イベントに参加しよう、収録で催眠を行おうと考える者にとって「事前催眠がいる」と思い込んでいる人は多数に上ります。過去には「事前催眠がないならばインチキだ!」と自らの著書でいい切る人も存在していたくらいです。
実際にはね、事前催眠がなくてもかかる場合は多いのですよ。ただし施術とか手順がちょっと難しくなるだけです(笑)。複雑な内容や入り組んだ指示は確かに難しくなるでしょう。
ですが、簡単な指示や暗示に関しては、延々と事前に時間を割く必要はないと思います。
事前に催眠の時間をとり過ぎて失敗したこともある(笑)。この後に出演した番組(学校へ行こう!)などでは被験者に長々と説明したり反応を読むテストを繰り返したため、かえってかかりが悪くなったり、怖がられてディレクターに注意されたこともありますよ。
「先生、説明すればするほど怖くなってる!」って。これには参りました。
瞬間の表情、被験者の「反応」を読み解く
私は撮影や収録においても延々と時間を割きません。被験性は事前に割く時間の多さで極端にかわる物ではない、と思っているからです。
先のような失敗もあります。被験者と長く話せば納得するとか相手が安心したり信頼(ラポール)する、と考えるのは誤りです。
言葉とタイミングを選べば短時間でもかかる人はかかるんですよ。
ただし、誘導を行う時間は少ないよりもあった方がいいに決まっています。事前に多くの時間が準備として割けるならばそれにこしたことはありません。より複雑な反応や複雑な指示、何かをきっかけ(音、映像、タイミング)に動くようなやり方は、事前の埋め込み作業である程度まで結果が決まってしまいますから・・・。
残念ですが、一般の方が考える程テレビ番組ってそんなに時間も予算もないんです。深夜番組は特にそうですね。低予算なのに失敗して、撮り直しとかお蔵入りもできる限りは避けたいところです。
催眠を取り上げた番組において被験者を集団で集め、スタジオで決まった相手に催眠をかけるのは、それがもっとも失敗の少ない方法で効率がいいからです。
通常であれば現地で通り掛かりの人、しかもまったくの初対面で素人に催眠をかけ面白い映像を撮ろうなど、正気の沙汰ではありませんよ。
通常であれば、どの先生も断ってくるのが当たり前です(笑)。
でもね、私はやってみたかったんですよね。自分の実力や技術がどの程度の物なのか、どうしても知りたかったから・・・。
なぜ、できたのかって?
んなものは、わかる訳がない(笑)。
とりあえず、度胸だけは座っていた。殺されたってへっちゃらだったでしょう。成功するとの自信、技術や知識への自惚れだけがあった。他のものなんてありゃしませんよ。当時、出演が決まって慌ててスーツを新調したくらいですから。
靴すら新しいものは持ってなかった。生活もギリギリだったんですよ。当初のギャラでは完全に赤字でした。
先にも少し触れましたが、飲みに行った店で催眠を行っていたらたまたま、隣に座っていたいわゆる「危なそうな職業の人」にからまれた経験は過去に何度かありました。
私は職業柄、接待で飲む機会が多く、タニマチ(いわゆるスポンサー)などと一緒に飲みに行って、催眠を実演する機会も多かったんですよ。
その頃は大阪に住んでいましたからね(笑)。「兄ちゃん、インチキくさい事やっとるのー。ワシにかけて見んかい!」とやられる訳です。そりゃ、凄いプレッシャーですよ(笑)。
中には有名な組の関係者もいらっしゃいました。
「できません!」は通りません。「気分がのらないから」も「今日は体調が悪い」も通りません。選択肢に存在しないのです。「今、ここで、すぐ、ワシに!」かけなければタダではおかんぞ、って雰囲気がヒシヒシと伝わってきます。
恐いですよね?
それでも逃げた事なんてなかった。逃げなかったからこそ、金も貰いましたし酒も驕ってもらったし名前も売れました。「似たようなトラブルがあったら頼ってこい!」と名刺も貰った。頼ったことは一度もないですけどね(笑)。
後が怖いしそういうつもりで誰かに接したことはないから。
これは相手が誰でも同じです。催眠術師(カウンセラー)が、相手によって態度を変えてはいけない。背景や肩書き、地位や金に頼ってはならない。これは私の決めたルールです。
頼った瞬間に技術者として下手になったり、精神的に弱くなりますから。
過去に背負ったものの量とか質、重さが違う
誘導に成功した途端、相手が手の平を返すように態度が軟化して「この兄ーちゃんは本物やー! ビール奢ったれ!」といわれ、冷や汗をかきながら一緒に飲んだこともあります。
テレビ局の関係者とかも、こういった人達とあまり変わりないでしょう。数字を獲ったり、凄い現象を目の当たりにするとコロッと態度は変わります。
言っておきますが、今はもうそういった強引な実演はやりませんよ(笑)。実演中に周囲から絡まれても素直に頭を下げるようにしています。
他にも失敗が許されない状況での挑戦は今までにも結構あったんです。別に催眠だけじゃない。他の仕事でもプレッシャー受けながら働いて頭が剥げかかったこともある。
売り上げが足りない、前年度実績に届かない、得意先が金持って逃げた、家族や親族の借金背負った、家庭や友人に驚くような大きなトラブルがあった等々、数え上げれば切りがない(笑)。
事故や怪我、親族の子供がいじめにあっただの、飲食店の運営に携わっていた頃には私自身が脅迫にあったり、殺されかかったなんてのもありました。
だーれも助けてくれなかったし、自分で切り抜けるしかなかった。
それに比べればこんなの楽勝ですよ。
確かに撮影にプレッシャーはあり成功するかどうかはわかりませんでしたが、別にそれでディレクターに殺される訳ではないでしょ? 少なくとも以前に経験した色々な事より気は楽かもしれません。
私が(番組も含め)様々な場面において誘導に成功したのは、技術以前に単純に「度胸」の問題でしょうね。
ええい、いったれ!
ロケの場所は渋谷になりました。
直前までロケの場所すらも教えてくれませんでしたよ。ロケバスに乗って、いきなり現地に行ってそのまま撮影です。おまけにタイトルは「ゲリラ催眠」(笑)。
今なら放送禁止でしょう。テロなどの騒動が起きる以前でしたからまだ通ったのでしょうね。
オープニングを近くの公園で撮った後、渋谷の雑踏の中でロケのスタートです。バスを降りてすぐにカップルなどを掴まえ、その場で催眠をかけます。
事前の打ち合わせではロケバスの中に被験者を連れてきて、バスの中で催眠をかける約束だったんですけどね(笑)。渋谷は込み合いますからロケバスが道に横付けできなかった。バスのサイズも大きいですし、あいにくと警察が路駐の取り締まりやってました。
やり始めてわかったのは、「こりゃー、時間が足らんわ」です。
渋谷ってね、車の通りが多いから一箇所にずっと車止められません。不可能なんですよ。おまけにその日はたまたまクリントン(アメリカの大統領)が来日してまして、異様な警備体勢になっていました。
そのクリントンを呼んで会談をやったのがよりによって出演しているTBSです。ディレクターや関係者としても、そういった時期に警察とのトラブルは避けたい所でしょう。
車を一箇所に止めてられませんから、被験者を掴まえてもロケバスまで連れて行けない。時間がかかるのです。すぐにそれに気が付きました。
咄嗟(とっさ)に私はこう考えました。
「立ったままでやろう!」
無茶苦茶ですよ(笑)。無理に無理を重ねることになりました。ただでさえ難しいシュチェーションなのに、雑踏の中で立ったままで催眠誘導を行い、おまけに警備の警察官の目を盗んで撮影をやって騒ぎにならないうちに撤収しようって事です。
「ええい、いったれ!」
面倒くさいから。一々、考えてる暇なんてない。まあ私も営業やセールス、接客業の出身ですから現場ってのは色々あるものなんですよ。その場その場で考えて合わせないとできることなんてない。やってやれないことは無いだろ、ってのは成功した後だから言えるんですけどね。
私は殆どの職業の人の催眠かけた経験があるんですよね。先にあげた「危ない職業」の方だけではなく、格闘家、自衛官、警察官、検察官、裁判官、医者、タレントに自営業、学生に水商売、一部上場の会社社長はもちろん、女性、男性、年令を問わず、幅広く、誘導を行った経験があります。
歌手もありますしねー。あと経験がないのは、アナウンサーくらいか?
立ったままで催眠をかけるってのをやったのはこの時が最初です。その後、「それでも成功する」とわかってから、当たり前のように外でロケやったり講演(公演も含む)でかけるようになりました。
それでも催眠にはかかる
深化するんですよね(笑)その状況でも。誰もが「不可能だ!」と思う事が可能になった一瞬です。
皆が息を飲むのがわかり面白かった。私は多少、緊張はしてましたが、これは催眠をかける際にはいつも感じる程度のプレッシャーでしたね。それも一組ではなく、全部で8組ほどの誘導に成功しました。
私にすれば掴まえたカップルの内のどちらかに催眠誘導に成功すればいいんです。成功の比率から考えれば、まだ気が楽だったんですが。そういった舞台裏にはスタッフは気がつきません。
催眠を解説する本においては「催眠誘導に成功し、深層催眠に移行するのは全体の15~20%に過ぎない」と書かれている物が殆どです。その言葉を信じるならば、催眠の成功率は良くて三割程度ですから、それから考えれば異様な確率の高さになります。
10組くらいを掴まえて、8組がかかるとすれば幾ら何でもおかしいと思うでしょう。
撮影中、ディレクターはホクホク顔をしていました。たぶん、珍しい映像が撮れたと経験的にわかったからでしょう。私も含め催眠が通り掛かりの人にかかるかどうか、良い映像が撮れるかどうかは、事前にはまったく確証がなかったんですから。
一部種明かしをしますとね、私が直接被験者を見てかける相手を選んでいる所にミソがあります。
忙しいからといって、AD(アシスタントディレクター)に任せて無作為に被験者を集めると、成功率はガタッと落ちます。
急速催眠などに用いる特別な方法も用いていますが、被験者をどう選ぶか? が重要なポイントになります。経験が物をいうんですよね、やっぱり。被験者選びはどうしても自分でやらなければなりません。
一旦、深化や反応さえ起こればこっちのモンです。
番組を見ていない方もいらっしゃるでしょうからここで解説すると、何を聞かれても「ガッテンダ!」と返事をするようになったり、「アッ!」と言われて足下を指差されると犬のウンチを踏んでしまったように感じたり、彼女に手を振られると、本当は前に進みたいのにどんどん後ろに下がってしまうような暗示を行いました。
台本にあったものもありますけどね。現場でアドリブで決めたものもあります。放送されなかったものにも面白い物があったんですけどね。シェーってポーズをとったり、カトちゃんペって相手に指をくっつけたり。
大胆にばっさりカットされていました(笑)。散々苦労したのに。
テレビカメラがあればかかる、のではない
結果だけから考えれば、通りがかりの人にいきなり何の説明もせずに催眠誘導を行っても「催眠にはかかる」と言えます。
流石にある程度、最低限の条件は必要になりますよ。よほど寒いとか風がビュービュー吹いているとか雨が降っているなどでは難しいでしょう。ま、それでも過去に何度も成功はしているのですが・・・。
後になってウチのサイトにメールを送り付けてくる人で「あれは、テレビカメラがあったからかかったんだ!」と言い貼る愚かな人もいました。
それだけの理由で全ての人がしっかり催眠にかかるならば、他の先生が出演を断ったりしませんよ(笑)。カメラさえ背負えば、施術者には後光が射すのですか?
便利な話ですね。そういった主張をする人はマスコミを異様に崇拝、信奉していてカメラさえあったら、「相手がどんな事でもしてくれる」と本気で思い込んでいるのでしょう。
出演を断って帰った人は催眠の世界ではかなり有名(だった)人も含まれます。求められている内容が難しいから引き受けないんです。それが普通でしょうね。
催眠「以外」こそが大事。それが私の誘導の根底にあります
催眠などに限らず、自分が有名になりたくて仕方ない人がいっぱいいますよ。あちこちのホームページや掲示板をみればわかると思います。
立派な煽り文句や素晴らしい?肩書き、妙なリンクや所属団体が、所狭しと並べてあるホームページがあるでしょ?
そういった人をこっそり遠くから眺めてみたり、面談してみると笑いますよ。たいていは派手なのは看板だけで中身はありません。会話すらきちんとできない人もたくさんいます。いわゆるネット弁慶もたくさんいますから。
自身では「催眠の実力者」だと誇りますが、会えば薄っぺらな人で「催眠が、催眠の、催眠で」とオウムのように同じ言葉ばかり繰り返す人もいます。
練習者や被験者に対し、催眠の話しかできない人はやはり二流でしょう(笑)。大学の教授や学校の先生でも同じです。つまらない講義や授業になるのは「人物としての面白み、深み」がなくて話に「広がり」がないから。
セールスの話においても触れていますが、営業や販売、仕事において「出来る人」は上手に雑談を挟みます。
いわば自分の得意分野の話は小出しにして無関係な話が並ぶのです。たわいのない世間話をはさみながら徐々に自分のフィールド、得意な分野へと話を誘導し最後に決着を図ります。
相手の興味を反らさないためには起承転結(きしょうてんけつ)が話の流れには必要で、どう話が転がっても「結びの部分」までを上手に行える人が話術巧者と呼ばれます。
つまり、目的地にたどり着くために「あえて遠回り」をしたり違う道筋も辿るものです。
ショートカットだけ行おうったってできない
それが上手になった人が「話を端折る」(はしょる)つまり、時間や面談を短くする方法も見つけるものでしょう。
凄腕のように煽るホームページがいっぱいあります。なのに、何年も前に行った私と同程度のことがやれる人は殆どいないのはなぜですか?
誰でもやれるならば、もっと早く他局でもやるでしょうね。視聴率は獲れたのですから。
この状況を言い換えるならば、どんな難しいシュチェーションや困難な状況でも被験者を見分ける方法、反応を見逃さない手法さえ学んでおけばできないこともないんですよ。
私の行った方法を理解できる人は少数だと思います。わかるのは本物のプロだけでしょう。ちょっと見にはよくある手順に見えても、私には経験で培った技術や応用があります。身体への触れ方、手の動かし方、話し掛け方やカウントのタイミング、間の取り方などにコツがあるんですよ。
私としてもこれまで延々、遠回りや基本通りの手順も行ってきています。アレンジとかショートカットだけやってきたのではないのです。
無駄にも思える長い練習や実演があります。その過程の中で端折るべき手順とか見逃すべきではない被験者の反応を調べ、理屈ではなく身体で覚えています。
イタリアに催眠術強盗がいました(笑)
これまでの技術、知識とか常識は打ち破られるためにあります。
他人と同じ方向を模索しても進歩はない。異常だと思われる方法、通常ではあり得ないと思う方向、誰かが通ったのとは違う道筋を探してこその進歩です。誰も行った事がないから「絶対できない」とは言えない。
やったことがないのにどうしてそんなことがわかるのですか?
これは悪い例の一つですけどね。これから催眠を勉強する方のヒントの一つになれば幸いです。以前に実際にあった事件です。
イタリアに「催眠術強盗」と呼ばれた人がいました。レジの女の子に話しかけ「あなたは私にレジにあるお金を全て渡してしまう」と言って二十数件の犯行を重ねたそうです。
そんな馬鹿な!? って話でしょう。実話なんですよね、これが・・・。当時、新聞やテレビで大きく取り上げられましたから。
その強盗が捕まった理由がまたおもしろいんですが、たまたま、非番で店に買い物に来ていた警察官が、レジで何やらやっている男を見て不信に思い話し掛け、犯行が発覚して逮捕に至ったのです。
かかってる本人以外、影響ありませんからね(笑)。周囲から見てると不思議な光景だったでしょう。レジの前で堂々と現金を受け取って、そのまま立ち去ろうとする客がいるんですから。
もっとも目撃してそれに気が付いた警官も凄いですけど。私は直接、現場を見てみたかったですね。
その男も、そこまでの技術があるのならそれをもっと違う方向に活かせばいいのに・・・。もったいない話ですね。
瞬間催眠なんて無いって? 催眠には事前催眠が必ずいる? 誰がそう決めたのですか?
僕が出来ないから他の人もできない筈だって? なぜそうだと決めつけられるのですか? ロシア(旧ソヴィエト)で伝説的な催眠術師が居たのですが、その方はパスポートや旅券の代わりにその辺にある紙切れや葉っぱで、係員に暗示をかけてゲートを楽々と突破してみせたそうです(笑)。
人にはわからない能力や、まだ解明されていない技術は確かに存在するんですよ。催眠もその一つなのかも知れないですね。催眠の利用方法や応用方法は様々に模索されていますが、それでも全てが解き明かされたわけではありません。
依頼されてもやりませんよ
イタリア人に関してはその後の警察の取り調べではっきりしていますが、レジの女の子は全員、強盗とは初対面でした。事前に会った事実はないんですよ。これをどう説明します?
被害にあったお店も犯人の自供があるまで、なぜ、お金がなくなっているのかわからなかったそうです。
面白いのはイタリアだけではなく、海外では時折、この手の犯罪者が出る事ですね(笑)
今なら私にもできるかもしれませんね。経験を積んだ今となっては、こういった人達が使った技法もだいたい推測できますから。
流石にこれは実験コーナーでもやりませんけどね。やれば犯罪ですから。
番組から依頼されても受けませんよ。これを読んで依頼してこないように。見せれば最初こそ「スッゲー」と言われますけど、後々、面倒にしかならないでしょう。催眠に対する悪い誤解が増えるだけでしょうから。
「アイツはやるに違いない!」って?
今でも誤解が多いんですから。勘弁して下さい。
もし、いつもそれをやってるなら私はもっとお金持ちでしょう(笑)。
参考までに
私は「急速催眠や瞬間催眠はあるのではないか?」と思います。
この文章、コーナーを読む人がどう受け止めるかは勝手ですが・・・。私は上級者には私なりに考えた急速催眠の方法を教えています。
他で教えている所の解説書、基礎知識になっているデータには古いものが多く、過去の遺物になっている物が数多くあります。特に「催眠の大家」などといわれる昔の人の本には弊害も多いですね(笑)。そこから知識を漁れば当然その著者と同じ結論にしか辿り着きません。
理由は簡単で根っこが同じだから。根っこが同じなのに違う実は成りませんよ。感覚や考え方、基礎の取り組みが根本から違うのです。
イタリアで催眠術強盗になった人も高名な催眠術の大家などではありません。強盗を働いたのなら、おそらくは金にも困っていたってことでしょう。例に出したロシアの催眠術師、あるいはアメリカに出現した催眠誘導の天才(彼はまったく言葉を使わず、握手だけで多数の催眠を行ったとされます)も、むしろ出自は低く貧しい出の者が多かったのです。
ヒトラーも過去には催眠や心理誘導を学んだとされています。彼は自信のない小男で失敗が多く、診療所に通っていて催眠に出会ったとも言われています。カウンセリングや催眠の施術も受けましたが、自身でも勉強もしたと言われています。
催眠においては大学で学び著作や本をたくさん読んだ人よりも、人と触れ合う機会が多く感受性の豊かな人間、過去に貧しさや苦しさに耐えたことのある者のほうが誘導が巧いという特徴があります。
不思議な話でしょ?
彼らは名前と肩書き、「過去の遺物」で誘導に成功していたのではないんです。
本当の意味で誘導に必要なもの、大切なものは何?
ラポールや権威づけを錯覚しやたらと威張り散らせば催眠には成功する、と思い込んでいる「大先生」に会うたびに私は閉口します。
それではあまりに程度が低い。名刺にズラズラと経歴や肩書きを並べれば契約は全て成功しますか? 肩書きや地位をひけらかせばセールスの売り上げが飛躍的に伸びますか? であるならば、つまらない世界ですね。
私はこう思います。
そういった見え透いた圧力、程度の低い権威づけでも確かに「人間に対する多少の効果」はありますが、それだけで相手を操ろうなどと考えるのはナンセンスです。
人間は人の言葉で感動するのです。人間だけが文字とか言葉という文化を持っている。文字の羅列、記号に過ぎない表記でも人の心を激しく揺さぶり動かすことができる。
それこそが力です。
時代を超えてゆく概念もある。イデオロギーもそうですし宗教や音楽もそう。他人を動かすのは「高圧的な態度」ではなく、受け取る側の心を動かす思い、作り手や伝え手が「願いを込める作業」だと思います。
その内容、願い、思いが、言葉や姿勢を通じて誰かに伝わる時に人も時代も動くのです。
催眠に限らずどんな世界でも同じですが、車や物、肩書きや金、まして「マニュアル」だけで相手を縛り操ろうとする人は自然に物事の本質を見失います。
ふんぞり返って催眠がかかるなら、私も楽なんですけどね。
肩書きや経歴に頼れば、重要な相手の反応は見逃します。重要な情報が、相手の表情や雰囲気に現れるのはほんの一瞬なんですよ。反応を見逃さないトレーニングを行い、経験を積むならば必ず理解できる筈ですよ。
撮影終了後のスタッフの一言
ホームページをやってるとね、よく著作を出している先生やテレビに出ている先生と比べられました。
「あんたは間違っている!」って内容がよく届いたんですよ。初期の頃は酷かった(笑。)何の面識もなく私のこともその先生?のことも知らない一般の人が、勝手に比較して悪口を書き綴ってくるのです。
番組を見たか、著書の何冊かを読んだだけでしょ? 背景とか苦労とか知りもしない。
不思議な感覚もしましたね。「あんたに催眠とか私の技術や経験の何がわかる?」との思いもあった。それでも当時はかなり凹んだ覚えがあります。
私の腕は本当にそういった「先生達」と比べて劣るのかどうかは、やはり興味がありました。
自分では劣っているつもりは無い。それなりに勉強と練習を重ねます。難しいケースにも取り組みますし経験も増えます。ですが、他人にはそれがわかりません。
テレビ番組に出ていることが全てで正義だ、と思い込む人が社会にはまだまだ多いのが実情です。有名な占い師が言ってることは全て信用するとか、変なタレントもどきのおっさんが「前世がスピリチュアルが」としつこく言っています。
そういった連中が一言、番組で悪口を言った瞬間に真面目に働いている人が中傷されたり、苦労して開発した製品の売り上げがガタ落ちしたりもするんですよ。
私の考えや自分で得た知識、経験が果たして間違っているのかどうか? また、私の腕や能力は本当に「たいした技術ではないのかどうか?」を私は自分をあえて難しい状況の中において実証して見たかったんです。
いわば武者修行時代に近いですね。鼻っ柱が強かったんでしょう。
(これは著書にも書きましたが)この撮影に同行して戴いたカメラクルー、音声さん、カメラマン、照明さんが撮影終了後に私に一言、こう言って下さいました。
「今日は先生に、プロの仕事を見せて戴きました」
私はこの一言を誇りに思います。この言葉を聞かせて戴いただけで撮影に参加して良かったと思います。たぶん、何年経ってもこの言葉を忘れたりはしないでしょう。
今後の励みにします。
収録でお世話になった皆さんには、この場を借りてお礼を申し上げます。
ありがとうございました。
1998年11月23日 初稿
2009年12月15日 加筆、修正
谷口信行