社会不安と欲望の法則
1999/12/31改訂
1997/09/01初稿
不況が長引いていると...
.※この文章が最初に書かれたのは1997年です。1999年に一度改訂しています。景気は緩やかに回復しており、状況は変化しています。
残念なことに不況が長引いています。
不況は今回が始めてではありません。ある周期があり、過去にも様々な形で不況は存在します。オイルショック時代や就職難と呼ばれた時代は今までにもあります。
今回の不況はかなり深刻です。要因となる部分が様々に入り組んでしまい、対策が立てにくくなっています。今までのように公共工事を前倒しして道路工事などをガンガンやれば立ち直る、というような単純な物ではなくなっているからです。
すでに経済がある程度発達してしまい、大きな次の一手と言うのが打ちにくくなっています。いわば複合型の不況ですね。
その抜け道がなかなか見つからない現状の中で様々な問題が表面化してきています。
現在、企業が生き残りをかけて行っているのは、リストラや人件費の削減です。
根本的な一手が打てないので、自分の体力を温存し、必要がない(と、経営者が思っている)部分を切り落とし、本体を助けようといった考え方です。
今までその企業や会社を支えてきて大きくするためにがんばってこられたお父さんがリストラの対象になってきています。
これはこれまでの不況ではあまりなかったことです。
「若い奴」の方が安く使える、といった感覚から、本来は働き盛りの中高年の働く場所が縮められ、奪われる傾向が見受けられます。
とても残念なことですね。
今回はそれを批判、何とかする方法を、というよりも、そのような状況下において、よく起ってくる問題や商売について書きます。
同じような悩みを抱えるOLや、リストラなどで悩む方のヒントになったり、危険なことに騙されないための力になれば、と思います。
街で見かけるようになる光景
大阪には「引っかけ橋」(通称です。本当はエビス橋と言う、ちゃーんとした名前があります。)と言う場所があります。
時々、雑誌やテレビで紹介されることがありますからご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか? その名前の通り、女の子が通るのを男性が片っ端からひっかけることから、この名前がつきました。
今は以前のような勢いはありません(笑)。私が十代の頃は、風営法などがなかったため、街が賑わうのは深夜12時以降でした。今では絶滅寸前のディスコや深夜営業の飲み屋が繁盛しており、「引っかけ橋」の周辺はナンパしようと目をギラギラさせた男がウロウロしていたものでした。
私が十代の終わり頃にも、現在のように不況に近かったのです。
大阪の就職雑誌などはペラッペラの薄さでした(笑)。(投資ジャーナルや豊田商事が現われるものこの頃です)
そんな中で、「引っかけ橋」で目立つようになるのはナンパに混じってホストクラブなどの接客業の連中です。
髪を茶色に染め、スプレーで固めたんだろうな、と言うような頭で、お客を探しに「引っかけ橋」でビラを配ったり、声をかけたりしていました。
最近、服装やスタイルは髪形は若干、以前とは変わったものの、同じようなタイプの人間がウロウロするようになってきています。
不況になると増えるのは「ホスト」や「客引き」、アンケートなどといって接近してくる自称「エステティック」や「美容師」、高額な商品や役に立たないチケットを売りつける連中です。これは、今も昔も変わっていません。
最近はインターネットを使った詐欺も多くなっています。
増える商売のパターン
不況下において、伸びてくる商売は幾つかのパターンがあります。
まともな商売もいいかげんな商売や商品もありますが、そのどちらもの共通するのは人々の欲求、欲望によりストレートになることです。
それが不況が続くと詐欺商法が増える理由でもあります。
※余談ですが、不況の折りには必ずといっていい程、女性の服装の露出が増える傾向があります。過去にはミニスカートの流行や、ハイレグの水着などがありました。今年、流行しつつあるのはキャミソールルックなどです(笑)。これなども欲望に直接働きかける商品の一例です。
生地(きじ)や服地業界で、不況になると必ず売れると言われる商品の一つにペィーズリー柄などがあります。アレなども、元々は女性器の形を図式にしたと言われ、不況になるとその度に形を少しずつ変えては販売されます。
潜在意識に働きかけると言われ、心理学を専門にされている方なら誰でもご存じの筈です。
「儲かりそうな」話はあまり沢山ある筈がありません。本当に儲かる話なら他人に教える筈などないのですから(笑)。
ですが、「儲からない」とストレートに言ってしまえばそれまでです。ですから、そういった連中は社会の不安をうまく操り、いかにも儲かりそうで安心に見える話を作ることになります。
お金や精神的に余裕がある場合は安易な話には飛びつきません。多少は吟味する余裕があるからです。
ですが、余裕がなくなってしまうと、正しい判断を見失い、自分に入ってくる(と思われる)物ばかりを考えるようになります。
もっとわかり易くすると、安い、儲かる、おいしい、失敗しない、安心だ、今がチャンス、「あなただけに教える」(笑)などがキーワードです。
上に書いたような宣伝文句が書かれた広告やCM、誘い文句は常套手段です(笑)。(限定品っていうのもありますね)
不況下だから「安い」商品に人気は集まります。それがより人間の欲求を刺激するからです。不況で買い物が自由にできない状況で安くて良い品物が手に入る、と考えることが本人に強い欲望を刺激することになるからです。
それすらも買えない、ということは現代においてありません。ローン会社などがあり、どんなに現金がなくても保証さえあれば買えるのです。それが違法な商売や、詐欺まがいの商法を助長する原因にもなっています。
欲求を刺激するのは、商品だけではありません。
「お金」が入ってくる、とか「安く遊べる」など、本能により近い商売が流行ります。先にあげたホストクラブなどもそうでしょう。不安感を一時期忘れるために、より強く、即物的な刺激を求めるようになります。(援助交際や風俗店などもその一つです。手間をかける余裕を失います)
気がつくと多額の借金だけが残った、なんてシャレになってません。
豊田商事や投資ジャーナルなどが伸びてきたのもこの時期(昭和60年、1985年)です。より強く欲求に働きかけ、「儲かりそう」に見える職業や会社、「条件」ばかりに気をとられます。
結果は皆さん、ご存じでしょう。
騙されてしまう理由
ホストクラブや街頭での強引な客引きが不況になって増えるのは、飲みに行くお客が増えたからではありません。
どちらかと言うと「働く」側が安易に「儲かる」と勘違いするからです。報酬を目の前にチラつかせてまず「従業員を」騙すんですよ。
誘われる側はそれにかかる費用(服代や飲食費など)を考えません。煽り文句とか雑誌の記事などを信じて「手軽で簡単に儲かるに違いない」と考えます。
どんな世界でもトップに立つのは難しいんですけどね(笑)。それは水商売だろうとタレント業だろうと会社員や自営業でも同じなんですよ。
出張ホスト詐偽とかも昔からある手口です。男性がひっかかってしまうのは、心のどこかに「俺はモテる!」との錯覚や自惚れを残しているから。実際にはそういった職業は存在せず、登録料という費用だけを請求されたりもあります。
インターネットでも一時流行りましたよね?「あなたにセレブのお嬢様(奥様)から指名が入りました!」などとおかしなメールを送り付けてくる業者もいます。
最近はその手の詐欺も多数存在します。私は「モテる」と勘違いしている男性の方はお気をつけ下さい。
世の中そんなに甘くありません(笑)。
騙されないために大切なことは、「儲かる」ことを中心に考えたり、入ってくる(であろう)実入りのことばかりを考えないことです。
フランチャイズの契約などもその良い例です。
コンビニでも飲食店でも、フランチャイズチェーンの本社や本部の人間は説明会に訪れた人間に、リスクの説明はあまり行いません。
「ここに出店すると毎月、幾らの売り上げと実入りがある」
「今の収入よりも楽になります。本部が支援しますから安心です」
といったおいしそうな内容を並びたてます。
まるでしばらく前(バブル期)の証券会社のようですね(笑)。「絶対にこの株は上がります。保証します!」と言っていますが、どう保証するんでしょう?損失補填でもしてくれるのでしょうか?
彼らの言葉を信じると「絶対に損はしない」んだそうで(笑)。しかしその割に契約書には契約者に不利な内容しか、謳って(うたって)いません。なぜなんでしょう?
それはやっぱりリスクがあるから(笑)。リスクの部分を説明するとビビる(怖がって)フランチャイズ加入を渋るようになるからでしょうね。
危ない部分は「聞かせないままに」欲望(実入りの部分)を煽る。それがポイント。
自分で調べないとだめですね
もし、本部の「絶対に大丈夫!」と言う言葉が全て本当ならば、なぜ、本部で資金を提供しないんでしょう?絶対に儲かることはわかっているのに。
全てを貸し付けて後から資金を回収すれば済むではありませんか?会社としては金利まで儲かりますよ(笑)。
(それが本当なら)私なら直営店にします。銀行だって喜んでお金を貸すでしょう。実績がある本部の方が、個人で借金を申し込むよりは資金は調達し易いでしょう。
現実には「加入した時点で」高額な加入料を取られます。途中で止めるといえば違約金が必要です。儲からなかった場合には損益は丸被りになるんですよ。
ですから加入するまでは熱心ですが、入って(入れて)しまえば何の支援も行わない会社もあります。
良い業者は、実入りよりもリスクを説明します。自分達がこれから負担する労働時間や、月々にどれくらいの出費が必要かなどを出展希望者に教えます。立地条件や競合店の調査も重要ですし、独立希望者は実入りよりも先に「自分が負うべき」リスクを知る必要があります。
まともな商売、儲かっている会社なら、場合によってはこちらから「お金を払うから」と言って加入を申し込んでも断ってくる場合もありますよ。
特に相手の会社側の人間が集めた経験者や体験者の言葉ほど当てにならない物はありません。
雑誌に載ってる幸せを呼ぶペンダントくらいの価値ですよ(笑)。むかーしに流行った「絶対に痩せる石鹸」のような物でしょう(笑)。
売りたい側はより多くの「欲望」を刺激し、「欲しい!」とか「安全だ!」「これに参加したい!」といった印象を植え付けたいのです。
それが商売の鉄則だから。儲けているのはほんの一部
新規出店には幾らのお金がかかり、計どの程度の実入りがあるのか、またそれを「システムやノウハウを売りつけて自分の懐が痛まない」会社側の人間の説明をそのまま鵜呑みにするのではなく、自分の目や耳で集める必要があります。
実際の経験者、すでに開店している経営者などからコツコツと集めた資料や内容、実績から判断する必要があります。
必要となるのはむしろ、苦労談。見え透いた成功話とかサクセスストーリーの「都合の良い部分」よりも、そこに至るまでの道筋や背景、辛かった部分でしょうね。
最近、巷やインターネットで増えているマルチまがい商法などにも気をつける必要がありますね。人々の不安につけ込むように増えるこれらの商売には気をつけましょう。
はっきり言いますが、際限なく儲かってリスクはまったくない商売などはありません。あれば他人に加入など勧めないでしょう。
人々の欲求をうまく刺激する人が商売で成功しますが、そのような「ピラミッド方式に次々会員を増やせば、あなたは巨額のお金を手にします」なんて方法には無理があります。
全員が儲かる商売なんてありえません。利益は分配すれば残りませんよ(笑)。
マルチや紹介販売などの方法はあなたに利益をもたらすのではなく、一部の人間が自分達に都合のいいように利益を得るために、周囲の人間の欲望を利用しているに過ぎません。
面白いのは、そういった商売に乗り出す人は入ってくる利益にばかり目をとられ、成功者の話ばかりを信じます。裏の話とか苦労談にはあまり注意を払わないのです。
マルチ商法や紹介販売で実際に高い利益を得ている方の%(パーセンテージ)を知れば、驚くでしょう。
ある組織(かなり有名ですよ)を例にとると、年収が500万を超える方は全体から見ると1パーセントに過ぎません。これなら、普通に商売を行った方が成功率としては高いと思います。
最近はそのようなマルチまがい商法が集会を開くと、驚くばかりの人が集まります。
毎年、長者番付が発表されますが、マルチまがいで収入を得た方が載ってませんね(笑)。税金を払ってないのでしょうか? 彼等の説明会の内容をそのまま信じると、確定申告に行く必要がある人は毎年、ゴロゴロとその組織の中にいる筈なのですが、それはどういうことなんでしょう?
不思議な話ですね。
儲け話を持ち込まれた時にはよく吟味する必要があります。
儲かるのは私? それともあなた?
リスクを「自分が」背負うのか、相手(会社)が背負うのか、自分はその仕事の「どこの部分」を背負うのか、事前に確認することです。
ホストクラブなども同じです(笑)。「私はナンバーワンのホストで、年収は1千万もある」とテレビ番組などで自慢する男がいますが、それならなぜ、自分は賃貸のマンションに住んでいるのでしょうか(笑)。
瞬間最大風速というか、一瞬だけの見入りでいいのならある程度の数字は取れます。ですが、継続して行うにはやはりそれでは不可能だと思いますよ。
自分の欲望をかなえるにはやはり自分の力がいるのです。何かにお金を払ったり、そのまんまシステムにのっかれば儲かる、なんてことはないでしょうね。
お金儲けには三つしかありません。
1.頭を使う
2.身体を使う
3.気を使う
実際にはそれらが複合しています。肉体労働をガンガンやろうにも雇ってくれる場所は必要です。職場では対人関係もある。
水商売が楽かといえばそうとも言えない。自分が汗水垂らして働くか、他の人には思いつかないアイディアとか商品を扱うか、誰かに優しい気遣いとか思いやりをもって接して「気持ちよく」お金を使ってもらうしかなくなりますね(笑)。
結局は相手の本能や欲求に強く訴えかける商品やアイディア、能力が、自らの欲望をも満たすのです。特に不況時にはそういった傾向が強まります。
何の世界のトップでも簡単にその地位につく人はいません。過去から独自の方法や理論を意識、勉強と努力を重ねています。それなりに苦労を重ねているものなのです。
成功を収めた人を見ると、その人の努力や勉強、それまでに背負ってきたリスクには敬意を払わず、彼が手に入れた物ばかりを羨む人は多いですね。
現実には成功談を聞くのではなく、失敗談を伺うべきです。苦労話とか難しかった部分を探ることが次の成功の鍵でしょう。
私?私ですか?私は自分の欲望にはより忠実です。まして他人を当てにするタイプでもありませんし。
私の書いた催眠、なんて特殊なテキストやビデオが売れたり、Shopで扱っている商品が売れているのも、見る人の本能に強く訴えかける何かがあるのかもしれませんね。
ご自分で何かの商売に乗り出す方はその辺りに注意してみられては如何でしょうか?
やる気があって、面白い人間なら相談に乗ります。
もっとも、私自身がそのような人を利用して儲けてやろう、と考えているのかもしれませんよ。
え? 人が悪いって?
それくらいじゃないと、あーた、今の時代を生き残っていけませんよ(笑)。
騙せ、とは言いませんが、せめて騙されないように自衛を。
1997年09月01日初稿
1999年12月31日改訂
谷口信行



