販売に応用してみると!?
2006/05/02改訂
1997/10/01初稿
元々は販売や接客側のプロ
トップページの「私の正体」の中にも書きましたが、私は元々セールスなどを専門に行ってきた側です。各地で接客業や飲食店の経営にも携わってきました。
行った場所も多種多様ですよ。北陸、東北、東京、中部、関西一円、九州、沖縄まで詳しいのは一通り仕事で滞在していたから。何年も住んでた所もありますし、数週間とか数日の例もある。中国もイタリアもシンガポールやマレーシアにも行ってます。不思議なことに全て仕事で観光では一度も行った事がないですが。
どこの地域にも詳しいですよ。出張でよく行ったから。土地勘もかなりあります。私のホームページの記述が様々な分野に至るのは、過去に行った仕事が多岐に渡るのとカバン一つでどこにでも仕事で出かけて行ったので経験が多いからです。当然、今の仕事になってからも出張は多いので全国に詳しくなりました。
私自身は元々、無口な性格でお客さんと話をする事も苦痛でしたね。
女性が苦手だったので何を話していいかわからない。関西で始めて営業の仕事をやった時、無口で「いかつい」(関西弁で怖いとか、ヤンキー風って意味です)兄ちゃんが営業に来たと揶揄されるくらい(笑)相手としゃべれなかったんですよ。
今は立板に水でかなり流ちょうに話しますが(笑)。私にしても最初から会話が巧かった訳ではありません。自分自身が何百人も前にして数時間の講演を原稿無しでこなしたり、番組出演等を行うなどとはまったく思ってもみませんでした。
あがり症だったので人前に出ることが嫌いだったんですよ。学生の頃は発表会とか人前に出る機会があるとよく逃げ出したものでした。
色々な職種を経験して、様々な体験を積んで色々な人と話をする機会を得るうちに、段々会話もうまくなってきましたし、知識の幅も増えました。売り上げも急激に上昇して下がる事は無く社会的な評価とか販売としての実績も身に付くようになりました。
他人の心を先に読み、その人の感情の先回りすることで販売や接客を行ってきました。おかげさまで、「売り上げ」で悩んだことはあまりありません。どういった職種、立場にあっても売り上げだけは順調で「どういった方法を使っているのか?」とよく聞かれたものでした。
そうなってくれば現金なもので、接客業が好きになった(笑)。自分なりに顧客や得意先の観察を重ね、人間の心理反応やマーケティングの勉強を徹底してやりました。すると更に売り上げは上昇しました。私がやめて10年にも経つのにまだ記録が塗り替えられない仕事や職種、店舗があるようです。水商売も販売業も視聴率(笑)でも記録持ってて、まだトップだそうです。
あちこちから「ウチに戻ってこい」とはよく言われましたよ。
今は兄と一緒に自営業(有限会社)やってるんですから、わざわざ戻る必要がないですけどね。
デパートには個性派ぞろい!?
私が学んできたことのすべてをお話しする訳にはいきません。私の飯のタネ(笑)ですから。ただし、少しだけならここでお話ししようかと思います。
一時、私はデパートの外商部の方などと一緒に販売を行っていた時期があります。
簡単にだけ説明しておきますと、デパートの中にはよくお買い物をしてくれるお金持ちとか上得意客をリストにしてあり専門に斡旋する部門があります。上得意客に良い商品とか珍しい物が入った時には優先的に持って行きます。外商部が主催して上得意客だけを招くイベントや催し物も複数開催されています。
お客さん側も目は肥えています。いわゆる「売られ慣れ」している訳です。大手デパート各社が外商部仕立てて毎日のように何かを持ち込む訳ですから競争は激化しています。半端な知識とか付け焼き刃の売り込みでは相手にされない。宝石や絵画などに至っては販売員よりも勉強されている方もいます。
好きこそ物の上手なれ、という諺(ことわざ)もあります。好きな商品については皆、知識を漁るのです。自分が欲しいものだからこそ詳しくなる。そういった顧客に商品を売るのは至難の技です。
デパートの中は個性派ぞろいです。それぞれが特有の販売方法や顧客を持ち売り上げを競っています。名物おばちゃんとか有名な販売員、特殊な才能を発揮する人もいます。
私が見ていて(面白いな)と感じたり(凄い!)と感じた販売員の話を紹介しておきます。広島の方ですが、私や周囲の販売員が「ボソボソおじさん」と名付けていた方がいます。
こういっては何ですが、商売のやり方については割といいかげんな人です。ショーケース(売り場にあるガラスケースのことです)に鍵をかけて、長時間飯を喰いにいったり休憩なども気軽に取っています。売り場から離れることが多いんですよ(笑)。盗られたらどうするんですか?
飄々としてるというか、とても熱心に販売をやってる方には思えません。確かにショーケースには商品(どちらかというと高額品)が並んでいますが、売り場にだーれも残っていないのでは売れる筈がない。そのブースだけ空っぽで販売員がいないのです。
外から見てるとあまり熱心な販売員には見えません。なのに、売り上げだけは突出していました。イベントとか催しの後には、売り上げベストテンみたいな一覧がデパート側から配られます。メーカーごとの売り上げや販売員ごとの実績が一目瞭然なんです。売り上げ伝票が残りますから。
その方は自分で商品を仕入れて売り場に並べる(いわゆるメーカーさん、プロパーという奴です)方法なのでデパートの社員ではありません。自営業の方ですから売り上げがあがらないと完全な赤字で持ち出しですよ。
知らない人が多いでしょうが、イベントの際に使うショーケースなどもレンタルなので経費がかかる。デパートの指定業者からお金を払って借り入れる形式になっています。売り上げが無ければメーカーの被りでデパートは一切の費用を持ってはくれないのです。
なのに、現場であまり熱心に売っているようには見えないのです。
(おかしいな〜)というのが正直な感想でした。
おかしな売れ方?
それはまだ、私が宝飾品を売り始めて間の無い頃です。先輩とか他の販売員から技術を学ぼうと色々な部分を参考にしていました。その「奇妙な販売員」(?)を横からよく見ているとある特徴を発見しました。
その人が扱っていた商品は高額商品(宝石)でした。普通のメーカーよりも遥かに高い商品がガツンッ、ガツンッとピンポイントで売れて行くのです。
まさにガツンッという表現がピッタリですね。時にはウン百万!という品物があっさり売れて行きます。長時間話し込んで売れた、というよりも立ち話のついでに高額商品が売れてゆくのです。
おどろくでしょ?私も最初はビックリしました。
通常は外商部が行うようなイベントで高額商品を勧める場合、係員が側にべったりつきます。商談が進みそうになったら「まあ、お茶でもどうぞ」と壁際にセットされたイスとテーブルに座るように勧めるのが一般的です。商品はトレーに乗せて後から係員がテーブルに持ってゆくんですよ。
ところが「立ったまま」で売れてる(笑)。それも決着まで数分です。
誰でも(おいおい〜.......)と思うでしょ?
そのブースでは2、30万の商品はあまり売れていません。よく商品の売れるメーカーのショーケースの前には人だかりができます。ですが、そのショーケースの前にはなぜか人はあまり集まっていません。
たった一人か二人(殆どは一人)のお客さんが「ボソボソおじさん」と立ち話してて、そのお客さんがなぜか財布を取りだし、カードや現金で薦められた高額商品をあっという間に買い取って行くのです。
これは正直いって驚きでした。
中には300万(!)なんて商品もあったのです。同じ売り場で同じ催しに参加していますから後で詳細がわかります。それもどうも常連客といった雰囲気ではありませんでした。始めて会った客にどうやったらそんな高額商品を売ることができるのだろう?が当時の私の印象です。
一個や二個が売れたのであれば交通事故のようなものです。羨ましくも何ともない。偶然であるとも言えるでしょう。ですが、その男性の凄かった所はその後もコンスタントに安定した売り上げを誇っていた所ですね。
販売に多少なりとも自負を持っていた私は、自分の自信がガラガラと音をたてて崩れて行くような感じがしました。その異様な姿に、普通の方法では追いつけないくらいの開きを感じてしまったのです。
相手の興味を惹き付けて行く方法
実は、相手の心を惹き付けて行くには幾つかの方法があります。
今は専門(心理学や催眠)ですので、詳しいですけどね(笑)。当時はそういった知識や経験が無かった。ですからとても驚いたのです。
心理学には相手(顧客)を魅了して引きつけてゆくための特別な方法もあるのです。
その人(販売員)を注意深く眺めていると、ある一定の法則や方法を使っていることがわかりました。
「この商品はね....」
最初の話しかけの部分、いわゆる「導入」の部分では廻りにも聞こえるくらいの声で話しているのに、いざ「落とす」(商品の購入を決定させる)部分になると、すぐ隣にいてもなーんにも聞こえません。声のトーンとか声量が小さくなってしまってご本人達(その販売員と顧客)以外にはまったく聞こえないのです。
(クーッッッ! 話の内容が聞きてぇ!)
と当時は思った物です(笑)。
私がその販売員を「ボソボソおじさん」と名付けた由縁です。
その「ボソボソおじさん」が商品をショーケースから取り出して見せ始めた当初は、商品を目線より低く見せています。話が盛り上がってくると手の高さとか立ち位置とかが違っています。説明をしながら宝石の位置や高さ、「顧客に話しかける位置」が微妙に変化しているのです。
不思議なのは、その動作を行っている最中、販売員(ボソボソおじさん)はお客さんの「目」や顔をまったく見ていません。
自分の薦める商品だけをジッと見ながら身振り手振り、商品の上げ下げをゆっくりと繰り返し、相手の目を殆ど見ない状態で説明を繰り返していたのです。
通常において、「視線」は相手に自分の意思を伝えるのにとても重要な役割を果たします。
「何か」を薦めたり、何かを相手にやってもらいたいとこちらが望む場合、無意識に相手に視線を合わせ、相手に同意を求めてしまいます。微笑みとか頷きとか相手の反応を得ようとし、相手をどうしても見つめてしまうものなのです。
言葉や態度、視線の位置や身体の反応(腕組み、首をかしげる、まゆを潜める、笑う)などで、相手の意思や感情を読み取ろうとします。プロの販売員であればそのように教えられますしそれが販売においては当り前となっています。
この販売員の方は相手の反応を「無視」することで逆に相手を自分のペースや自分の販売方法に「引きずり込む」ことに成功していたのです。
それに気付いた時、私は「スッゲ〜、おっさん!」と素直に関心したものでした。
催眠にも共通する所「声のトーンと大きさ」
私がそのような内容や癖に気がついたのは、催眠や心理学に興味を持ち、いつも他人を観察する習慣が身についていたせいでしょう。他の販売員の方でそのことに気がついた人はいなかったと思います。
この「ボソボソおじさん」は、たぶん、心理学や催眠などには興味や知識はないと思います。大学で専門で勉強されたとか習ったとかいうことはありません。
間違いなく実地ですよ(笑)。その方が現場で試行錯誤を繰り返すうちに自然に身に付いたものでしょう。勉強しようとか意図的にやろうとしたのではなく、顧客に「どうやったら商品説明を聞いてもらえるのか?」「商品が売れるのか?」を考え、自分で各地をまわって実演するうちに徐々に独自のスタイルとして確立されたものだと思います。
経験こそがその人(販売員)の全てであり、高い価値なんですよ。
心理学とかマーケティングや統計学は、その「現象」を説明したり、誰かが後で利用する為に必要になるのです。そういった勉強をまったくしていない人でも天才肌の職人とか凄い販売員も巷にはいますよ。
付け焼き刃の知識とか安易な物まね、どこかで何かを聞き齧ったのとは違います。実地で身に付けた技術を自在に使いこなしている訳ですから.......。
「ボソボソおじさん」おそるべし!ですね。
もう一つ、販売に際して重要なファクター(要因)が「声」の大きさとトーンです。
催眠中でもそうなのですが、人間の意識が集中しはじめると「聴覚」は異様に高まります。
ほんの些細な音とか遠方で囁く観客の声も大きくなります。場合によっては閉鎖された空間(部屋)から遠く離れた場所で聞き取り実験を行っても受け取れる場合があります。
超感覚実験ともいいますが視覚や触覚よりも聴覚が高まる例は多いのです。長くなりますからここでの詳しい解説は避けますが、これは人間の脳内の構造が影響しているのではないか?と思います。
一度意識を集中させることに成功すれば本人の注意がそれるまで、あとはずーっと小声でも構わないのです。
人間の耳だけが一定に「音」を拾わない
補聴器などを作る際に一番苦労するのが、拾い上げる音が一律に大きくなってしまうことです。人間の耳、すなわち脳の構造は素晴しい機能を持っています。
それは音を取捨選択する能力なのです。
人間の脳、「耳」の処理能力は抜群で、電車の中やパチンコ店の騒音、人ごみの雑踏の中などで友人などと話す場合、必要のない音を「自動的にカット」します。
実際には「必要のない音が聞こえなくなる」のではありません。物理的には振動として届いていますが、精神的に無視出来るのです(笑)。道端に転がってる石ころと同じですね。見えていても無意味だし価値がない。あってもないのと同じになる。透明人間は透けて見えますが、石ころは視角とか意識の中で背景と同化してしまいますからみえないのと同じ扱いになります。
人間は必要のない雑音や、自分とは関係のない話し声を「意識しない事で」カットすることができるのです。周囲の音と自分の聞き分けたい音を見分け、分類して無用な情報をカットします。
つまり、周囲の音がかなりうるさくてもフィルタリングし、その人の声やトーンに合わせる(意識を集中する、波長を合わせる)ことで、自動的に聞き分ける機能を持っているのです。
これを機械的に再現することは。究めて難しいとされています。
補聴器の難しい所は均一に音を大きくしてしまうことですね。イコライザーとかミキサーの機能をつければ不快な音とかデシベルによって取捨選択は可能です。ところが、そういった機能を持たせると巨大になってしまう。小型の耳穴収納タイプとか耳かけ式だとなかなか実現が難しかったようですね。
必要のない音は「記録しない」(意識せずに聞こえていないようにする)ことで、総合的なデータ量が減らせます。精神的な疲弊を減らし、必要なデータだけ抜き書きできるのです。
必要な内容だけを記憶して行きます。
小声がポイント!!
賢明な読者の方はもうおわかりだと思いますが、相手の注意を惹き付け、「心」をわしづかみ(?)にするには小声で話すことがポイントになります。
これも一般の方が陥りやすい過ちですが、大声で話せば話すほど心と身体の距離は開くのです。自分の意思を明確に相手に伝えなければと焦って声を張り上げ、身振り手振りを大げさにして話す人がいますが、そ現実にはそれは逆効果です。
いわゆるアジ・テーションとかヒトラーが戦前に行ったような街頭演説では意味がありますよ。マイクの設備が弱かったり、周囲に雑音が多くて聞き取りにくい状況の場合、大声が必要となる場合もあります。身振り手振りを大げさにすることで得られる視覚効果もあります。
が、販売とか少人数を相手にする場合には不必要です。
余談ですが、日本の政治家が街頭演説や応援演説で「咽を枯らして」いるのは、ご本人が「興奮して」声を張り上げてしまうせいもありますが、拡声器やマイクを通した声では迫力や印象が伝わらず選挙や演説で負けてしまう例があるんですよ。
彼らは体感的に知っているからです。自分の肉声で聴衆に直接的に訴えかける必要があるんですよ。政策の中身とか話の内容だけで済むなら、拡声器どころかカセットテープを繰り返して流すだけで済みます。
恋人と親密な内容を話す時、また、友人や家族、会社の同僚と話す際、内緒の話は声のトーンを下げ、周囲に聞こえないようにこっそり話しますよね?
これは周囲にバリヤーを張り巡らせるようなもので、意識を集中しないと廻りに聞こえない空間を意図的に作り上げることで周囲とは孤立した状況を作り出しているのです。
相手との距離を縮めて特定の相手とだけ情報を交換、意思の疎通を確認することで、お互いの信頼感や親密感、心の距離を近づける効果があります。(※パーソナルスペース参照)
「大きい声」と「普通の声」、「小さい声」や身振り手振りと「特別な情報」(例えば、奥さんにだけこっそり値引きします、など)を折り交えて話をすることで、相手との「心の距離」を一気に縮めることができます。
これを時々、無意識に行っている女性(ホステスさん)や男性もいますが、上手な人を見ると私は思わず「うまい!」と唸ってしまいます。
考えて実践出来る人は少ないです。無意識に行える人はある種の天才でしょうね。
だから「やれ!」って言われてもねー?
どんな知識にも技術にも背景や解説はできます。
ただ、それを知識として知っているというのと、実践して売り上げにつなげるというのでは天と地ほどの違いがあります。私も色々と試してみたのですが、なかなかうまく行きませんでした。知識として理解することと実際に行うのとでは違ってくるのです。
これまでに自分が行ってきた販売手法とは手順が違い過ぎるのです。やはり異質な方法ではありますから。
私はそれまで顧客の視線を「追う」ことで表情を読み、販売の実績を作ってきていました。その時点でも私の売り上げが低かった訳ではない。むしろ、同年代の販売員からは突出していた側です。
その私がそういった販売方法に手を出すってことはですね、これまでに勉強してきたことや慣れた手法を一切、全部捨てなければならなくなります。
これには参りました。
私としては「視線」が追えないことは、とても緊張と不安を伴う行為になります。
表情を読むのは下手ではないんです。下手ではないからこそ、これまで様々な仕事でうまくやってこれたのですから(笑)。今回、行おうというのは相手の視線を「まったく読まない、見ないで操る」ようなものです。やはり難しいでしょう。
目を瞑って車やバイクの運転をやるような感覚(笑)。相手は物ではなく人です。
まして、あの男性(販売員)のように最初から最後まで殆ど相手と目を合わせないなど、神業というか一種の奇蹟のように感じます。
私自身はそれに対する違和感が取り除けませんでした。
何度か試してみましたが、結果、一か八かのような賭けのような販売になってしまいました(笑)。大きいのも当てましたが、結局、他がおろそかになりますので、かえって販売実績は伸びませんでした。
私なりのオリジナルへ発展
「こんなことができるか〜ぃ!」
ってのが、色々挑戦してみての感想でした。
やはり「餅は餅屋」といいますか、芸術や音楽のようなもので他人の技術をそっくり、ものまねするのはむずかしいですね。その人を見ているとまるでマジックのようです。
「私、買うわ!」と、たまたま通り掛かっただけの顧客が決然と言って、財布を取り出すシーンは何度みても唖然(あぜん)となります。
私と同じく販売員であったり、接客業出身者であればわかる筈です。お金を「支払う」という行為は、凄いプレッシャーなんですよ。まして高額品なら尚更です。高額な商品を購入する場合には支払いを行うお客さんも緊張しますが、商品を「売っている側」も緊張するのです。
その場に立ち合い、高額な商品を「一瞬で」販売する姿はやはり、感動というか新鮮な驚きがあります。
後で考えてみれば、全体の売り上げとか販売数では決して負けていなかったのですが.......。やっぱりインパクトの問題ですね。見て驚く販売方法というのはやはり少ない。憧れがあったのです。
できればあやかりたいと思って、かなり勉強しました。
ただ、当時私が所属していたメーカー(宝飾品の会社)は、主力商品が30万から50万くらいまででした。当然、その「ボソボソおじさん」とはお客さんの年齢層や商品層、価格帯が異なります。一日に一発限りで「高額品を売ってしまえ!」という販売方法は通じず、コンスタントにある程度の個数をまとめなければなりません。
もっと金額の安い商品(千円均一など)ならば、大声を張り上げてお客さんを集め、販売することもできますが、この価格帯の商品はあまり大声を張り上げることもできないのです。勢いがあって景気はいいのですが、商品が安っぽく感じてしまいますから........。
一発勝負ではダメで大声張り上げて叩き売り風にするのもダメ。個数は売らなければならないが、決して安物を売っているのではない。数十万はお客さんからすれば大金です。その相反するものを両立するのが難しい。
そこで私は自分なりにまた違った販売方法を思いついたのでした。
逆転の発想、視線を「外して」利用する
私が考えたのはその「ボソボソおじさん」方式と、従来からある接客マニュアルに催眠や心理学の応用と取り混ぜたミックス法です。
視線を「読む」ことと同時に、途中で「視線を外す」ことの重要さに感づいた私は、まず視線を伏せたままで集客する方法を思いついたのでした。
買い物にいった際、店員が寄ってきて圧迫感を感じた方もいらっしゃるでしょう。特にブティックや百貨店などで店員に積極的に話しかけられると、「嬉しい」と思う人もいますが、その反面「自分の思った通りに選べない」と感じる方もいらっしゃると思います。
情報の氾濫する現代において、欲しい商品を「選ぶ」ために専門家のアドバイスならとても大切ですが、「押し付け」や「無理売り」されることは、どなたも嫌いではないかと思います。
今は昔と違いますからね。販売員に視線をバチッと合わせられ「いかがですか?」と勧められると、気の弱い方は逃れにくくなりますが、それでいちいち商品を買っていたら破産ですよ(笑)。
今までの販売(少し前)においてはそれでもよかったのです。
現在は生活が多様化しています。自分の望む商品を、自分のスタイルに合わせた形で求めに行く方が増えました。ですから、店員や販売員の薦めるままにその商品を購入する方はかなり減ったのではないかと思います。
商品を「無理に購入させられた!」と感じた方は次からそのお店には買い物に行きませんし、クーリングオフもあります。売る時は良くても下手をすると後日、返品されてしまいます。よほどいかがわしい商売方法とか、売りっ放しで即座に店舗や会社ごと撤収しないとすぐに訴えられるでしょう。
特に若い人達は流行などには敏感でしょう。販売員にいくら「お薦めですよ」といわれても買わない人は買いません(笑)。ネットで情報を検索してから出かける人も多い。価格や値引き率についても知っている。なのに強引に「いかがですか?」とショーケースの前で連発すること自体が時代遅れでナンセンスですよ。
私が販売に際してとった方法は、ショーケースの前で立ち止まる人がいてもすぐには話しかけません。一拍時間を置いてから近づきますが、「いかがですか?」も絶対に言いませんよ(笑)。
※話しかけ方や言葉遣いにも手順があるですけどね(笑)。内緒です。絶対に行ってはならない話しかけ方がある。また物まねや盗用が増えたら嫌なので、ここでは引用を避けます。
決して相手の目を見ずに低く優しめの声で話しかけるようにしたのでした。
面白いことに立ち去る人が減りました。視線が合ってないからです。私と視線が合うまではあまり緊張せず落ち着いて商品を見ていることができるから圧迫感がありません。商品を「強引に押し付けられる」心配がなさそうだ、と相手は感じるので、顧客は自分に主導権があるように感じて警戒を解きます。
「少しは商品を見てみよう」といった感覚に近付くのです。
視線の利用方法
これは意外な盲点でした。
通常であれば「相手の目を見て話せ!」とは、セールスや営業で教わる初歩の初歩でしょう。どんな売り上げを誇る諸先輩も、よほどひねくれた人でない限り「相手から目をそらせ!」とは教えません(笑)。
心理学の世界では「視線を逸らす」ことは不思議でも何でもないんですけどね。「相手の顔を見る」ことは当り前ではありません。むしろ、視線をどう逸らすか、どういった会話、どういったタイミングで相手に視線を合わせるかが重要なポイントになってきます。
意外に思う方もいるかもしれないですが、会話中に相手が自分から目を逸らしてしまうと「こちらに何か落度があったのではないか?」という不安感を与えます。会話や態度に「何か気にいらないことでもあったのではないか?」と受け取ってしまい、非常にうろたえることもあるのです。
販売を行おうと思う人の場合、相手の視線が先に逃げるとやはり緊張します。相手の注意を惹き付けよう、視線をもう一度、自分に合わさせようと考え必死に説明を行う例があります。これはむしろ逆効果で、必死に説明を行えば行うほど不信感が増しますし、「何が何でも売りたいんだな」といった先入観に繋がり易いのです。
※余談ですが、片思いで誰かを口説こうとする場合にもそういった心理は強く発揮されるます。反対に言えば、あなたが「会話中に」意図的に視線を逸らした途端、極度ににうろたえる人は、あなたに好意を寄せている可能性があるということです。
政治家の世界でも飲食店などの場合でも、このような方法(視線の合わせ方、外し方)で相手より精神的に優位に立つことに利用されます。相手に自分の言い分を飲ませる、売り上げを上げることに利用されているケースはあります。それを知識として知った上で利用しているか、無意識にそういった手法を用いているかの違いだけです。
中には天才というか勉強もしないのに自然に行い、上手に利用している人もいます。
そういった人の多くは周囲がみると「なぜか?」モテる人が多い筈です(笑)。パーソナルスペースのコーナーなどにも書きましたが、よく観察してみればわかりますよ。視線と相手への触れ方、会話の内容、パーソナルスペースへの立ち入り方、離れ方は全て催眠誘導の基本にも通じるものです。
落ち着きがなく、ソワソワしていて相手の顔が見れない、勇気がなく他人の顔を見るのが恐い、というのとは違います。
意図的に「視線を逸らす」相手の視線を読んで行動する、などは使い方によっては強力な武器となるのです。
売らなきゃ、意味はない!?
私の考えた新手法で、確かに集客には成功しましたが人を集めるだけではお話しになりません。
売らないと.....(笑)。当り前といえば当り前ですが。
そこから発展させた手法で「三点法」というものがあります。
すべて触れるのは不可能なので、簡単に要点だけ説明します。
よく似た商品を三種類、選び出します。
完全に異なる商品を選び出してはなりません。似通った部分があったり同じジャンルであったり同じ価格帯、同じ種別(例えば、ネックレスならネックレス、ブローチならブローチ)で統一します。
その後、商品を見ながら顧客に解説を加えます。この商品はここが良いんだけれどここの部分が悪い、とか、ここの作りは良いがここの色が悪い、とかいった具合です。
お気付きになりますか?
三点の商品を選び出した時点で、どれかを選ばせる方式になっているのです。そもそもの前提が「もし、この中の商品から選ぶとしたら」「どれがいいですか?」ですが、それは裏を返せば「どれかを選んでください」とやんわりと押し付けていることになるのです。
嫌いな人とか買わない(可能性の低い)人は、その時点で手にはとりません(笑)。断ってきますよ。興味が無いとかどれも「嫌い」といった解答になるのです。
商品の数、選択肢を広くとりすぎると顧客は乗ってきません(笑)。顧客は迷うだけで何も決められなくなります。ですから絞り込む必要があるのです。比較対象を絞り込んでその商品の利点と欠点を繰り返し粘り強く話すことで商品の良さとか、独自性、割引率などを強調して徐々に方向性を整えて行きます。
女性の方で「アクセサリーなどまったく欲しくない」と思っている人は少ないでしょう。タダならば欲しがりますよ(笑)。貰えるとか、誰かからのプレゼントなら喜んで受けます。
誰かからのプレゼントで「この中から一点選んでください」と言えば女性は迷いに迷います。
アクセサリーは好きだけど支払いが嫌いだったり、自分で買うのが嫌なだけです。さりげなく商品に触らせるとか「こっちとこっちならどっちがお好みですか?」と勧めることで購買意欲を煽ってゆきます。
わざと商品の欠点から話す
三点法を使って商品に説明を加え、長所と短所を比べます。そして選択(または欠点の指摘)は必ず、相手にさせるようにします。
販売員はそれに反論を述べません。反論すると「私に意見に逆らった」というような印象を与えるからです。ご本人に自然に(間違いなどに)気付いて戴くために、次の商品を取り出し、それの長所を並べることで(前の商品の)欠点を打ち消して行きます。
私は販売の際、基本的に最初から最後まで「いかがですか?」とか「お似合いですよ」とは言いません(笑)。宝飾品や宝石の販売員としては異色かもしれないですね。本当に過去に一度も言ったことがない。面白いでしょ?
商品は必ず、ご本人に選んでもらいます。
かわりに、商品の長所とかアフターサービスについて(サイズ直し、返品、交換等)については、それこそくどいくらいに丁寧に説明していました。
自分の売りたい商品を強引に薦める販売員は二流以下です。少なくとも私はそういった販売員からは絶対に買いません(笑)。自社の商品や売りたい商品を悪く言う社員、販売員などいないからです。
褒めすぎると嫌われます。顧客からすれば自分が好きでもない商品を無理やりに押し付けられているような感覚に陥るからです。どの店員、営業マンも売りたいのはやまやまなんですから.......。褒めちゃダメですよ。魂胆が見え透いています。
販売員の本心は「皆同じ」ですが、それを悟られないように一工夫する必要があるのです。
商品の欠点を先に述べ、(もしくは相手に話させ)後からその商品の長所を話します。そして、商品は必ず相手に選択させ、手に取らせるように心がけます。
この商品にはこういった欠点(例えば色が薄い、傷がある、型が古い)はあるけれど、反対にこういった長所(石が大きい、入手が困難だ、値引きが可能)があると相手に繰り返し説明することで、相手に「この人は誠実な人だ」とか、「商品に自信があるのね」といった先入観を植え付けることになります。
※ただし手順を間違えないように。「欠点を指摘した後に長所を褒める」これが大切です。長所を話した後で欠点を話すと印象は最悪です(笑)。販売における心理学の基本中の基本。よくよく注意しましょう。
全部、誉めたり認めてはいけない
最初から最後まで相手を褒めちぎる人に対し、人は不信感を持ちます。
相手に全て諂う(へつらう)人、「おせじばかり言う人」もしくは「何か魂胆のある人」といった印象を受けるからです。褒め方にも叱り方にもコツはあります。
人にはコンプレックスが存在します。
誰しもプライドは高いんですよ(笑)。例外はありません。反面、プライドの高い人ほど本当は根強いコンプレックスも存在します。ですから、異性に「君の全てがカッコいいよ」とか「綺麗だよ」などという漠然とした褒め言葉を、最初から最後まで並べたててしまうとたいていは嫌われます。
勘違いしている人は直したほうがいいですが、「君の全てが好きだ!」とばかり繰り返すと失敗します。誰にでもそのようなことを言っている人といったイメージを相手は持ち易く、傷つくからです。かえって不信感や不快感を持たれ易いのでしょうね(笑)。
第一印象がよほど誠実な人だと思われていないと、言ってはなりません。たとえそれば本心から出た言葉でも逆効果になる場合があるのです。人はそこまで容易に他人を受け入れはしません。
誰にでも大なり小なりコンプレックスは存在しますから、よほど自惚れている人でない限り、そのまま言葉通りには受け取りません。「私には何の欠点もない」「完璧な人間だ!」などと思っている人は珍しいので、その言葉だけでは表現として足りないのです。
それよりはむしろ「君の性格のどういったところが素敵だ!」とか「目が綺麗でチャーミングだ!」「プロポーションが最高だ!」など個別に攻めるべきでしょうね。
性格や外見、持ち物のセンス、学識や話し方や「歯並び」(欧米では結構多い褒め言葉)が美しいなど、具体的な所を指摘して「だから僕は好きなんだ」とはっきり褒めたほうが、より相手のプライドを刺激して満たすことになります。
話が少々逸れましたが、つまり、商品全てを「良い」と認めさせるよりも長所も欠点も話した上でその商品全体のイメージを正したほうが、結果として信頼を生むのです。
欠点も長所も隠さずに話す。複数の選択肢を持たせて顧客に選ぶ自由を持たせる。それが結局は誠実で嘘のない人(商品)であるといった印象を生み、後々のトラブルを予防出来るのです。
遠回りなようでそれが近道です。
本当に売りたい商品は左側に置く
私は売りたい商品は相手の左側に置きます。
実証はされていませんが、人間は左側にあるものを選ぶ習性があるようです。
子供を後ろから前触れなく脅かして追いかけると、7、8割の子供が左に逃げます。利き腕や性別には関係なく、そちらに逃げようとする習性があるそうです。これは世界各国共通であちこちで実験が行われており、同様の結果があるそうです。
ですから、デパートなどの構造では上向きに登って行くエスカレーターなどから降りると、左側に販路(売り場)が作ってある場合が多いのです。これは一説によると人間の心臓が左よりにあるからだ、などと言われていますが、実際のところよくわかっておりません。
結果は同じですが実証にまでは至っていない。ですが、私が実際に販売を行っていた場合もなぜかお客さんから左側にある商品を選んで買って行くケースが数多く見られたのです。
まあ、ちょっとズルいですが、私は高額商品で自分が売りたいと考えている商品ほど、相手の左側に置く習慣がつきました(笑)。
実証はされていないのですが、売り上げの向上を信じてそのような構造になっている建物なども多く、販売などにも積極的に取り入れられている知識です。使わない手はないと思いました。
私の経験でもそれが正解のように思ったので、左側に置く習慣が身に付いたのです。
予知ではなくて予想、予想というより経験
以前、ある外商の方と販売であるご家庭にお邪魔した際、事前に「この商品とこの商品を私は薦めますが、結局、お客さんが選ばれるのはこの商品ですよ」といってからお宅にお邪魔し、その通り決まってしまったのでビックリされたようです。
私にすれば過去の経験からそのような事態が想像できたので、不思議ではなかったのですが......。
予知ではなくて予想、予想というより経験に根差す推測です。私が車の中でそう言い張るので、その外商の方はわざわざ「売れそうにない」家庭を選んで連れて行ったようです。
一部解説しておきますとね、外商員にもやる気の無い人もいるんですよ(笑)。今月のノルマを果たしてしまった外商員は次の月のために上得意客や見込み客は残しておこうと思います。
売り込みに来るメーカー(要するに私)は何が何でも売りたい側です。経費もかかっているのですから。デパート側(外商員の上司)やメーカー側(私)は売る気満々ですが、そんなこと外商員には関係ありません。毎月、厳しいノルマを抱える彼らは手を抜ける所では抜きたいと思うものです。
売らなきゃ叱られますが、売ったからといって給料が劇的に増える訳ではない。そりゃ人情としてそうでしょう。メーカーはその時だけですが、外商員は毎月のノルマがあります。
で、その時はどうやら顧客のお宅には伺えそうもなかった、と。端境期で上得意客は温存したかったんでしょうね(笑)。イベントや催し物会場で商品は売りたかったのでしょう。
ですから私は一計を講じたのです。
心理学の知識をわざとひけらかし、特殊な知識や技術を持っていると外商員を煽り、「どんな家でもいいからともかく行ってください。実証してみせますから」と移動中の車の中で繰り返した訳です(笑)。
「売れるモンなら売ってみろ!」と考えたと思いますよ。私があまりにはっきり言い切るので反感を買ったのでしょうね。まあこっちは計算ずくだった訳ですが.......。ともかくお客様の家には連れて行ってくれたのです。通常よりも「難しそうな」お客様のお宅にお邪魔させてもらいました(笑)。
それでも確かに商品は売れたのです。
販売は面白い(笑)
その外商員からすれば事前に私が言った通りに商品に決まってしまったので、そうとう強いショックを受けたようです。「この商品とこの商品を取り出して私が勧めるのはコレですが、売れるのはコレです」と事前に外商員とは打ち合わせをやっていましたから。
今考えてみれば、よくそんな遊びをやったものです(笑)。もしそれで売れなかった時を考えてください。私の販売員としての評価はボロボロですよ。売れると「こいつが」大騒ぎするから連れて行ったのに、結局は売れないことになるのですから......。
自信があったんですよ。当時は神懸かり的なパワーがありました。
その後の催眠現象とか講演、出演でもかなり無茶をやりましたがその延長線上でしょうね。
絶対に売れるとの自負があった。今ならどうか?と言われれば少々疑問もありますが、基本的なスタンスや能力は変わらないでしょう。体調不良で悩んでいる時や精神的なテンションが完全に下がっている時でなければ大丈夫(笑)。自信があります。
私はそういう悪戯が好きでしてね。初期の頃、通り掛かりの人に催眠をかけるなどに成功したのも、結局は私の性格によるものです。
そういった販売方法や技術も、きちんと勉強してみればそんなに不思議なことではないのですが、ちょっと見にはマジックのように見えるかもしれませんね。
私が初期の頃「ボソボソおじさん」を見て、ショックを受けたように.....。経験とか知識は力であり、時にとてつもない効果を発揮することもあります。
販売って仕事は面白いですよ。
相手の顔が見えますから.....。
私は誰かの驚く顔をみるのは大好きです。
え、人が悪いって?
気のせいでしょう。
※この文章が最初に載せられたのは1997年10月頃になります。
フジテレビなどに出演したことのある、某催眠術師(本業はマジシャンだそうです)が、ここのコーナーの内容を自分の考えたことのようにあちこちで吹聴していたそうです。プロダクション関係者から話を聞いてビックリ。
違ーう。私がオリジナルです。外商部などには私と実際に営業にまわって、それを目の当たりにした人が何人もいます。できるモンならどこかで実証してみなさいって(笑)。
最近はパクリ屋ばっかりでうんざりです。前田大輔も含め馬鹿ばっかりですね(笑)。おかげさまであんまり更新しなくなりました。書きたい知識や技術、経験は幾らでもあるんですけどね.......。
1997年10月初稿
2006年05月2日加筆、修正
谷口信行



