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パーソナルスペース 他人との心と身体の距離

2006/01/24改訂
1997/06/00初稿

見知らぬ二人

以前、あることで戸惑ったことがありました。もうあれから何年経ったでしょうか?大阪に住んでいたことがありまして西成区の近くといえばわかる方もいるでしょうか?

関西に出て来て初めて自分で賃貸マンションを借りました。土地勘がまったくなかった私は不動産業者の勧める通り、安いマンションを借りたのです。近くにコインランドリーもあって、気ままな一人暮らしの私はそれなりに楽しくやっていました。

ある日、いつものように自分の借りていたマンションのエレベーターに乗り6Fから1Fへと向かって降りていました。

すると、途中の3階あたりでドアが開き見知らぬ男性が二人、エレベーターに乗り込んできました。思わず私は「こいつら、なんだ?」と身構えました。

当時、借りていたマンションは、あまり安全な地域とは言えませんでした。よくいえば下町、悪くいえばガラの悪い地域です。マンガの「じゃりんこチエ」のモデルになった街です。大阪では有数?の危険地帯でしょうか?

※わかりにくい方は大阪、西成区、あいりん地区などの単語で検索してみてください。このマンションはJR新今宮駅から歩いてすぐの場所にありました。当時は私も、ホルモン焼きをよく食いました(笑)。

襲われるんじゃないか、と私はとっさに身の危険を感じたのです。身体が身構えてしまい神経が高ぶったのですが、すぐ実はそうではないことがわかりました。

エレベーターに乗ってきた二人が違う国の言葉で話し始めたからです。私は語学にはあまり堪能ではないですが、どうやら韓国語のようです。見た目はアジア系で日本人と変わらなかったのですが、どうやら外国の方のようでした。

彼等が母国語で会話をしなければ見分けがつかず、わからない所でした。二人が私に「スーっ」と近づいてきたために、私が勘違いしたのです。

後で考えてみると、なぜ私がそういった勘違いをしたのかに気づきました。

他人との心の距離、パーソナルスペース

皆さんは「パーソナル スペース」という言葉をご存じでしょうか?

耳慣れない言葉かもしれませんが簡単にいうと、自分と他人との間にできる空間のことです。

電車などに乗った際、また映画などを観にいった時でも構いませんが、場内に入ってきた人はよほど特殊な習慣や性質を持っていない限り、座っている人のすぐ隣に席を取ろうとはしません。

通常、隣の人とは一つか二つ席を開けて座ります。電車などでは両端の席が開いていればそこからまず埋り、次に真ん中が埋まります。隣の人とは幾らか空間を空けた上で徐々に席は埋って行くものでいきなり、赤の他人と密着する例はありません。

席が空いているのにそういった行動をとれば、痴漢か強盗と間違えられます(笑)。場合によっては警戒され、大声を上げる方も出るかもしれませんね。

誰しも赤の他人とはあまり近づきたくないものです。その人がどんな人であるのか、ある程度把握できるまで自分には近寄って欲しくないのです。相手の情報が無いままにあまりに近い距離に近づいてしまうと、それはそのまま危険に近づくことを意味します。

危害を加えられることを避けたいからです。相手に捕まってしまう距離というのを人は無意識のうちに計り、逃げられる、もしくは自分が防御できるだけの「心の余裕」を距離として置こうとするのです。

それがパーソナルスペース、つまりお互いの身体の位置、空間となって現れます。

日本人は空間が大きい

彼等(エレベーターに乗ってきた二人組)に私が恐怖を感じたのは、彼等の距離(パーソナル スペース)が、日本人と違っててかなり「近い」たために戸惑いを感じたからです。

日本人はボディランゲージ(握手や肩を叩く、相手の身体に軽く触れるなど)が下手だと言われています。若い世代のなかには気軽にそういった行動や表現をする人達もいますが、全体的にはまだ少なく、照れや気恥ずかしさが先に立ちます。

あまりにも親しげで相手にベタベタ触ると、馴れ馴れしいとの印象を生むことがあり、上下関係にうるさい日本の職場などでは、かえってそのような行為が軋轢になることもありますから。

日本人のパーソナルスペースは、他の欧米人やアジアの人達に比べ大きい(広い)のです。欧米の映画などで当り前のように行われる行動パターンである、友人や家族、恋人を肩を組んだり、腕を組んで歩いたり、表でキスをしたりという習慣が日本にはあまりありません。

一部の若者にはそういった感覚を持つ人達も現れているようですが、自然にというよりは、欧米の映画や文化に刺激されてそう行っている部分もあるのでしょう。年配層の中にそういったものに抵抗を持つ人がいる以上、定着するには時間がかかりそうですね。

欧米の若い人達が日本人に対し、「シャイだ」とか「自分から近づいてこない」とかいった感想を持つのも、習慣や文化の違いがあるのです。いきなり近づいてくる人間に対して、日本人は「馴れ馴れしい」などと感じやすく、欧米人は「フランクだ」とか、「親しみやすい人物だ」と受け取る違いがあります。

欧米と日本の分かり易い習慣の違いは「握手」と「お辞儀」ですね。


※余談ですが、日本人は長く握手の習慣を持ちませんでした。武家の社会を中心に発展した江戸時代、手を相手にとられる事は禁物だったのです。

「手の内を見せる」とのことわざがありますが、手の平の内側を見せることは手の方向、すなわち抜き打ちの刀の方向性を見抜かれることであり、武士としては恥だったのです。結果、手の平は軽く握り、視線を合わせずに頭を下げる習慣が生まれます。

相手の目をみないでお辞儀をするのもそういった頃の名残りです。上役であったり、お殿様と目線を合わせる事が不敬だとされた時代も長かったので、日本人はお辞儀の際、自然に目を伏せます。目を合わせるのは戦いを意味するから。ハリウッドなどは捉える日本人「もどき」のお辞儀が不自然なのは、相手の顔を見ながらヘラヘラ笑うからです(笑)。


日本人にとって手や肩が「直接触れる」距離とは、相手との特別な関係を差します。すなわち、恋人や親しい友人、家族などがその範疇に入ります。少なくとも、始めて会って少し話をした人は、自分にとって「特別」な関係には当たりません。

「親しい友人や仲の良い人家族」と、「ただの知り合い」とは距離が明確に違うのです。

ですから、自分のサークル(パーソナル スペースを円で囲ったもの)に入り込んでくる人は、自分に危害を加える者、敵として認識しやすいのです。

エレベーターに乗り込んできただけの人達である彼等は、別に私に意図的に近づこうとした訳ではありません。普通にエレベーターを利用しただけです。外見が日本人に近い彼等を見て、私の方が勝手に勘違いし、相手に対して身構えることになったのです。

パーソナルスペースの利用方法

一見、他人との間に垣根を作っている、不便な距離のように見えるパーソナルスペースですが、実は便利な利用方法があります。

ビジネスや恋愛、また生活において、相手の本心が知りたいと考えたことはありませんか?

私はありますよ(笑)。相手が自分のことをどう思っているのかについては「知りたい」と思う方が殆どでしょう。廻りが自分のことをどんな目で見ているのか?はどんな人でも気になる所です。

恋愛や仕事、家庭生活や学校において自分が相手に嫌われているのか、それとも好意を持たれているのか? にまったく興味がない人は、よほど自分に自信があるか、何事にも無頓着で関心がない人だけでしょう。ビジネスにおいては得意先の動向、上司や部下の感情は把握しておきたいでしょうし、奥さんや恋人、これから口説こうとか好きになってもらいたい相手の気持ちを知りたいのは当然だと思います。

パーソナルスペースを用いれば、相手の心の簡単な判別が可能だったりします。

あなた自身を参考にして下さい。誰かが近寄ってきた際、「無意識に」スーッと身体が後ろに下がったことはありませんか?

嫌いな上司だったり、苦手な同僚、うっとおしい異性であったり、何かでトラブルなっている相手の場合、自然に身体が引いてしまい、「いけない!」と思ったことはなかったでしょうか?

ご本人が我慢しようと思っても、数センチ、あるいは数十センチ、相手の近寄ってきた方向とは逆の方向に身体が下がってしまうことがあります(笑)。これは心理的な反射行動、自分を守るための自然な反応ですので、なかなか自分で意識しても止められません。

相手がこちらに近づいてくる前に、何らかの予兆や予備動作があれば別ですが、相手が咄嗟(とっさ)にそのような行動に出てきた場合、たいていの人は勝手に身体が反応してしまいます。

「嫌な奴がきた!!」と心が感じる取る余裕があれば、ある程度はそれに対処できます。身体というより「心」がそれに備えるからです。予備動作がなければよほどのトレーニングを積んだ方でなければ、身体の反応、反射は起こってしまいます。

プロには凄い人もいる

私は過去に様々なアルバイト、職種を経験しています。自分で飲食店の経営をやっていたこともあり、接客業の傍ら相手を観察するのが趣味でした。その趣味が高じて心理学やマーケティングの基礎を学び、カウンセリングや心理相談が職業となっています。

これは余談ですが、私がこれまでに付き合いのあった新地や銀座などの一流と呼ばれるホステスさん、京都などの売れっ子の芸者さんなどのなかには嫌いな客だと思うとスーッと近づく人がいます。みていて面白いんですよ(笑)。私はその人(お客さん)が露骨に嫌われているのを知っていますが、彼女達はそんな素振りは「おくびにも」出しゃしません(笑)。

凄いでしょ?これはホステスさんが嫌がって離れて座ったりすると、接客態度にそれが滲んでお客さんに気づかれるからです。相手に気がつかれれば指名が減りますし、なんせ相手はお金持ちですので、余計な嫌がらせをされてしまう場合もあります。

ですから、嫌な客であればあるほど「あ〜ら、◯◯さん。久しぶりね」といいながら真横か真正面に座り顔を近づけます。そうすれば相手の動きが視線に入りますから、相手の予期せぬ動作にも驚かずに対処できますし、自分の表情を読まれにくくなるのです。

かなり勇気はいる手法でしょうが、露骨に嫌がっていることを逆手にとってうまくやってる訳ですね。

これは学校や会社などでも応用が効きますよ。

時折、居るでしょう?上司や学校の先生のもっとも近くで居眠りしているような奴が(笑)。要するにパーソナルスペース内にいることで視野角に入ってないのです。自分に視線が向いたり、意識を向けられた時だけ「ウンウン」とそれらしく頷いていますが、実際には何にも聞いていなかったり、相手から直接差されることを巧みに避けている場合もあります(笑)。

前出のホステスさんや芸者さんのような人達はそうやってパーソナルスペースに入り、相手の気持ちを引きつけておいてから上手に席を外します。相手を嫌っていない、嫌だと思っていない証明(?)を行ってから他の席へと移るのです。

「あちらで他のお客さんが呼んでますから」とウエイターや店の女将に言わせて一旦、席を外すのですが「また戻ってくるから」と朗らかに笑って本心を隠すでしょう(笑)。

自分でもやってみましょう(笑)

こういった手法を利用すると、自分が相手にどう思われているかを知ることができます。自分が相手の本心を知りたいなら、相手に心の準備をする暇を与えないことなんですよ。

例えばですが、気になる相手には自分からスーっと近づいてみればいいのです。声をかけるタイミングが難しいですが、近い距離に忍び寄って「ねぇ?」と軽く話しかけるだけでも反応が得られます。

相手が「わぁ、ビックリした!!」程度の反応で身体が大きく逃げていなければあまり問題はありません。距離が近いですから。その後、「脅かさないでよ、もう!」とでも言って、相手が軽くあなたの腕でも掴んでくるか身体にでも触ってくるなら反応は上々でしょうね。

「なんなんですか? もう!!」と凄く怒ったり、眉を潜めながら必死で表情で平静を整えようとしている場合は要注意です。更に相手との身体の距離が開くなら八、九割はその人に嫌われていると考えて間違いありません。

先ほどプロのホステスさんの話をしましたが、いくら一流のプロといっても人間には違いありません。ほんの一瞬、心に隙間ができることがあるのです。

後ろから突然話しかけられた場合や、トイレなどに立った際、偶然、どこか(外)で出くわした場合には人間は本心を隠せません。そういったときに相手が身体が「逃げる」反応をする場合には、自惚れたり見下したり勘違いしたりせず、相手との人間関係の修復や見直しを図った方が無難でしょうね。

本人(私も含め、自分自身)が思うよりももっと、お互いの人間関係は複雑である場合が多いのです。

自惚れてしまって安易に相手を見下してしまったり、何もかも信用してして何かを無くしたり、嫌な思いをする前に、自分の姿勢を正して相手をよく知り、理解する努力をしておく必要があります。

こういった方法を用いれば確認することができますが、注意点を1点だけ。

何度もは効きませんよ(笑)。相手が慣れますから。またいつも同じ手法で突然、誰にでも後ろから話しかけるようになれば、それまであなたと嫌っていなかった友人や知人、得意先や会社の同僚、ご家族がら疎んじられたり嫌われる可能性もありますのでご注意を。

何事もほどほどが肝心です。

パーソナルスペースの区分

どんな相手とでも触れあうにはまず、相手の距離に入れてもらわなければなりません。意外に忘れてしまいがちですが、距離が遠い相手とは恋愛も商談も成功しないのです。

商談などで話が煮詰まってきた際、お互いが膝を「乗り出す」ようにして話合うようになり、お互いの間にある距離が縮まってきます。セールスや営業をされている方なら一度や二度は経験があると思います。お互いを「認め合った」場合、距離は自然に縮まるものなのです。恋愛においても商談においても、友人同士、家族においてもそれは同じだと思います。

※注意 反対に意見の激しい対立や感情の行き違いのある場合にも、距離が縮むことがあります。これは、相手を「殴ってやろう」とか「刺してやろう!」と思う場合にも「手の届く」範囲に近づいてくる場合もあるのです。勘違いすると大変ですので、ご注意下さい。

じゃあ、パーソナルスペースを応用するために、無闇矢鱈に相手に近づけばいいのかというと、そうではありません。先の外国人と日本人の比較でも多少触れましたが、必要以上に急接近すると「馴れ馴れしい」と勘違いされたり、「しつこい!!」と相手に身構えられたりするからです。

相手の距離に入るためには、幾つかの手順が必要になります。

実はは「パーソナル スペース」つまり、相手との距離やサークル(範囲)は幾つかの段階に別れれています。簡単に要約、7つに区分するなら遠い順から

1. 明らかに危険だと感じる人、以前から嫌いな人

2. まったくの初対面、もしくはまったく知らない人

3. ただの知り合いか、見たことがある程度の人

4. 何度か、話をしたことがある人

5. プライベートでも話をしたり、遊びに行ったりしたことがある人

6. ごく親しい友人(幼馴染みや昔からの同級生など)

7. 恋人や家族など

などに別けられます。もっと細かく別けることや、もっと簡単にすることもできますがこの程度が一番わかりやすいでしょう。

1に分類されている人がいきなり4番や5番のサークル内に近づいた場合、嫌悪感や恐怖感から相手に手酷い拒絶を受けます。相手には、対象者を受け入れるだけの心の準備ができていないからです。

催眠においても心理障壁と呼ばれる壁(テキスト参照)があります。個人それぞれに、心のなかには文字通り心の「壁」があって、その壁を乗り越えなければ相手の心を掴めません。

これが意外に難しいのです。

人はそう簡単に相手に心を委ねません。心の距離は身体の距離となっても現れます。

少なくとも相手と親密になったり、何かの提案を受け入れてもらおうと考えるなら、5の位置くらいに近付かないと難しいでしょうね。

長い話はダメ!

「じゃあ、どないせいっちゅうねん!!」と言われる方に簡単な方法をお教えしましょう。

得意先でも異性でもかまいません。自分が気に入ってもらいたい、もしくは、好きになってもらいたいと思う対象が決まったら、できるだけ何度も足繁く通い、相手と直接、顔を合わせることです。

それも長時間では駄目です。ここがポイント(笑)。

勘違いしている人は結構いますが、相手に気に入られたいがために相手と延々「長く話せばいい」と思い込んでいる人は多数に及びます。

実は人間の脳や記憶は、そこまで便利にできてはいません。一回の面談で長く時間を割いてしまうと、最後に与えた印象がもっとも色濃く残ります。最後の印象がマイナスであった場合、むしろ、とりかえしがつかない失敗を招きます。

どんなに楽しい話で盛り上がっていようと、どこかで相手が感情を害する部分があるとそちらの印象のほうが強く残ったりもします。時間が長くなればなるほど、その危険性、可能性は高まります。相手に十分に理解されているならいいですが、会って間もない関係なら致命傷です。

人間はよほど特殊な訓練や経験を積んだ人でないと長い時間、何かに意識を集中していられないのです。当然のことですが、長時間の演説や電話での長い会話の内容は要点が頭に残りにくくなってしまい、「つまらない」「面白くなかった」とも言われがちです。要するに記憶にすり込まれるのは一瞬でしかない。

そうなると一部のインパクトがあった部分だけで、相手を判断するようになります。

一般の人はは漫才師やコメディアンじゃありませんから、よほど会話のうまい人か経験を積んだ人でないと楽しい話を延々と続けたり、何時間も会話で相手の興味をひき続けるなんてことは事実上は不可能に近いでしょう。面白い人なら長くても「ああ、楽しかった」といった程度の印象は残せますが、じゃあどんな話だったか聞かせてと誰かに説明を求められると、聞いたことの半分も伝えられないでしょう。

面談の上手な人、かけひきの上手な人はそのような愚を行わず、引き際をわきまえます。

初対面の相手やまだ馴染みのない相手には簡単に一言、二言、言葉をかけ、「じゃあ、また来ます」とか、「近いうちにまた寄らせてもらいます」と言ってあっさり引き下がります。時間にすれば2,30分でしょうね。場合によってはもっと短くなりますが、足しげく回数を通い、自分の印象のマイナス面を残さないまま立ち去るのがポイントです。

アメリカで実際にあった話 

相手を自分のペースに巻きむには、まず注意を惹き付けておいてから、あっさりと帰る、これが最初のステップです。先の区分に当てはめると、1から6には一気に飛べませんが、2から3、3から4に飛ぶことは可能です。また、それを意図的に加速することも可能なのです。

これはアメリカで実際にあった話なのですが、ある男性が綺麗な女性に一目惚れしました。彼女とどうしても付き合いたいと考えた彼は、彼女の住所を突き止め、毎日毎日、熱烈なラブレターを送り続けたのです。

彼が彼女に手紙を送り始めて一年が過ぎた頃、彼女は結婚しました。それも彼の送った手紙が縁で.......。しかし、結婚した相手は手紙を送り続けた彼ではありませんでした。

賢明な読者は、もう結末にお気づきでしょうか? そう、彼女の結婚した相手とは彼女に毎日熱烈なラブレターを届け続けた人、すなわち郵便配達人だったのです(笑)。漫画みたいな実話ですが。

郵便を配っていた人(配達人)は仕事の途中でもありますし、毎日長々と彼女と世間話しをしていたとは思えません。せいぜい一言か二言を、配達のついでに交わしていただけなのです。

ただそれが普通と違っていたのは、ずーーーーーっとそれが続いたことです。一日もかかさず、せっせと手紙を書いた「誰かさん」のおかげで、二人は毎日顔を合わせることになったのです。雨の日も風の日も....。寒い日も暑い日も欠かすことなくそれは一年の間続いたのでした。

あとでその事実を知った男は、きっと悔しがったことでしょう(笑)。

現代に喩えるなら、電子メールや携帯電話だけではダメですよ。相手とは直接、会いましょう。その手間を惜しんだり手抜きする人は郵便配達人や電気屋に彼女を浚われても文句が言えなくなります。

相手との「距離」は大切です

興味深い統計があります。

近似値とも呼ばれていますが、恋愛や結婚の八割近くが学校や職場、住んでいる地域が同じなど、よく顔を合わせる人との間で行われています。遠くの恋人よりも近くの他人、つまり距離は近いほど良く、一度に長時間会うよりも短く何度も会う人の方により強い親近感を覚えるのです。

わかりますか?何時間も延々電話で話している相手よりも、1日に何度か顔を合わせ、時折声を交わす程度の相手を「好きになり易い」ことを示しているのです。

遠距離恋愛が成り立ちにくい、と言われる由縁ですね(笑)。

ですから誰かに好きになって貰いたいと望むなら、まず相手の遠い位置(サークル)に入ることから始めましょう。ただし、電話や手紙(メール)だけで済ませようそしたり、ただ遠くから見ているのではなく、直接相手に会いに行く勇気が必要になります。

思いは伝えなければ始まりません。会って話をすれば、漠然とであっても相手に何かが伝わる場合があるのです。

仕事においても時折、得意先に電話だけで済ませようとする営業マンがいるようですが、心理学的に見ればそのような人は完全に失格です。どんなに忙しくても直接挨拶にくる営業マンはやはり、やり手で実績の高い人が多いでしょう。

相手先に滞在する時間の「長さ」が問題ではなく、そこに足を運び、相手に自分の顔を「見せる」行為そのものが、得意先や顧客からの信頼を得るための必要な手順になるのです。

相手との信頼関係を上手に作り上げている人は、万が一、自分の行いでミスが出た際にも相手を危機的な状況、完全に交渉が決裂するまでに怒らせたりしません。しつこいくらいにマメにあちこちに足繁く通う人の場合には、「あんたが頭を下げてるんじゃ、しょうがないな」と言って、多少のトラブルやミスは許してもらえることすらあります。

反面、「何か売りたい」時や、何らかのトラブルがある時にだけ訪れ、しつこく相手にまとわりついて時間を費やす人は周囲に徹底して嫌われるようになります。

商売も恋愛も同じで、やはり手抜きはいけないという所でしょうか? 昔から「女ったらしはマメじゃないとできない」といいますが、心理学上からみれば女ったらしじゃなくても、あちこちマメに顔を見せておいた方がいいように思います。

心の距離は身体の距離です。

できれば会った方々、とくに女性に露骨に顔をしかめられたり、遠巻きに避けられるような人間関係にはしたくないですね(笑)。私もよくよく注意したいと思います。

※このコーナーの初稿は1997年私が開業当初に書いた内容です。

2006年01月24日加筆修正、改訂

                谷口信行

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